Nコン東京都本選(高等学校の部)Shinta的講評
8月4日、Nコンの東京都本選(高等学校の部)を府中の森芸術劇場に見に行きました ということで例のごとく各校の講評をしていきたいと思います。全14校です。とりあえず、まず結果と自分の審査を見比べてみます <本当の結果> 金:大妻中野 金:杉並学院 銀:国立音大附 銀:桐朋女子 銀:國學院久我山 銅:創価 銅:都府中西 <私の審査> 金:杉並学院 金:大妻中野 3:都府中西 4:國學院久我山 5:豊島岡女子学園 6:国立音大附 7:東京家政大附女子 (8→桐朋女子、9→創価) 金賞2校は当てました。都府中西は3位だと予想しましたが銅賞(6or7位)、豊島岡女子学園は5位だと予想しましたが賞外(8位以下)でした。まぁ、所々誤算はあれど大体合ってたって感じですかね それではここから本題、全14校の演奏の講評を演奏順にしていきます <第76回(平成21年度)全国学校音楽コンクール 東京都コンクール本選高等学校の部審査byShinta> 課題曲「あの空へ~青のジャンプ~」 作詞:石田衣良 作曲:大島ミチル 1:国立音楽大学附属高等学校(女40) 課題曲→丁寧な入り。言葉の発音が安積女子高校(現安積黎明高校)のような知的な感じ。全体的にテンポは速めであるが、「豊かに」でタメたりとメリハリがある。shoutは考えたなという感じ、曲に合っている。全体的にはfの高音でやや雑になる。ラスト92,93小節の「JUMP UP」はいっぱいいっぱいといった印象。個人的には最初の演奏ということもあったのか、涙を誘うような良い演奏だった。 自由曲「マザー・テレサに」(瑞慶覧尚子)→下2声の「ルンルン」にsop.はやや浮いている印象。altoの低音はよく安定していた。やや惰性で曲が流れていき、歌詞も若干聴きづらい。音程は大体正しい(たまにsop.高音下がるのが勿体ない)のだが、もっと力で押せる声作りをすると良いかもしれない。 2:日本音楽高等学校(女、人数記録忘れ) 課題曲→やや幼稚な発声か(嫌いではないが)といった感じであるが、歌詞は聞き取りやすい。sop.「安全な」の高音など上手く当てていた。スキャット部はちょっと横に動いたのみ、物足りない。こちらも国立音大附属と同様に92,93小節の「JUMP UP」はいっぱいいっぱい、といか処理しきれていなかったかもしれない。国立音大附属よりもさらにパワーに欠ける。とにかくもうちょっと力で押せるようになりたい。 自由曲「五ツ木の子もり歌」(間宮芳生)→声がまとまっていて、自由曲の方が練習していることがはっきりと分かる。sop.は高音域は良いが、中音域に課題アリ? ラストのpは上手く収めたが、こちらも全体的にパワー不足のため、強弱の幅が狭くやや一本調子に。 3:頌栄女子学院高等学校(女20) 課題曲→20人にしては声量がある(sop.によく歌える人が1人いる?)。「GIRLS」は英語の発音、中途半端でなくきれい。mezzoが全体的に雑だった印象。力はあるので、丁寧さがつけばこの学校は化けるかもしれない。ただあの曲作りからしてラストの「JUMP UP!」は物足りなさを感じた。 自由曲「Gloria」(C.アグネスティーグ)→solo(alto?)良い声。たまにmezzoが飛び出したりと統一性に欠ける。課題曲よりは声が溶け合っていて、練習してきたなといった感じ。こちらも声量あるが、最後の和音など決められなかった。 4:共立女子第二高等学校(女12) 課題曲→各パート良くまとまった出だし。「なに」のmezzo,altoがやや乱れたか(ここをきれいに演奏するのは難しい!)。全体的にfでmezzo(恐らく)が乱れがち。shoutは独自性があった。スキャット部でのsop.のsoloはgood! 少人数ならではの良い演奏でした。 自由曲「AVE MARIA」(F.プーランク),「Tota pulchra es」(M.デュリュフレ)→sop.中心によくまとまっている。pでの一体感よい。2曲目altoがたまに乱れるが、自由曲の方が下2声も安定している。ラストもpの和音決めた。 5:豊島岡女子学園高等学校(女22) 課題曲→各パートが力を持っているなといった印象。安定感があるが、2拍3連のリズムの正確性が著しく低い。意図的? shoutは楽譜通りだがきれいにまとめた。パワーもあり、歌詞もききとりやすく、スキャット部の動きも面白い。だがスキャット部の後やや走った。また、フレーズが切れることが多いのは勿体ない。 自由曲「ふるさとの夜に寄す」(三善晃)→出だしからまとまった演奏。f,p部では気を使って発音しているが、どちらでもない部分では歌詞が聞き取りづらい。 6:川村高等学校(女12) 課題曲→声がちょっとこもりすぎ、引きすぎ? やや作為的表現が目立ち、うまく流れていかない。また発音も力みすぎといった印象。fの中でも「LET'S」「JUMP」などで力み、雑さが特に目立つ。ただそれなりに声はまとまっているし、声量もかなりある。 自由曲「青」(鈴木輝昭)→「Ah_」での融合感に欠ける。ただ、独特の声がメロディーの部分では聴きやすく、プラスに働いた。課題曲の出来からみれば、よくこの曲を歌い上げた。 7:桐朋女子高等学校(女28) 課題曲→上手いのだけれど何か物足りないといった印象。sop.がきれいなのだが、下2声が消してしまう場面があった(下2声も上手いが)。「上と下…」の16分音符のところではやや音楽が停滞してしまった。「JUMP UP」での指揮者の先生の動きは参考になる。スキャット部の動きは楽しそうにやっていて、好印象。 自由曲「色白女童」(福島雄次郎)→効果音などよく安定している。発音の具合もちょうどよく、自然な音楽に仕上がっている。自由曲の方が良い。 8:大妻中野高等学校(女40) 課題曲→パワーもあるし、きれいに鳴っているし、曲の入りから実力を感じさせる演奏。ダイナミクスの幅があり、洗練された表現。各パートがそれぞれきちんと働き、溶け合っている。スキャット部の動き、shout「JUMP UP」も工夫されている。 自由曲「瞬間―いま―」(安西亜也子)→声のまとまり、音の響きが見事。ところどころ「Ah_」で歌詞を消しそうになるところもある(序盤)など、伸びしろもあり。面白い曲でした(初演らしい)。 9:創価高等学校(混40) 課題曲→本日初の混声校。男声が入り、厚みがあるが、「動くことない…」など低音の細かいところは消えかけた。shoutなども力がある。曲全体としてfで押し切った感や、力みがあった感は否めない。そしてその割にはラストの「JUMP UP!」は物足りない印象。 自由曲「白い雲」(信長貴富)→男声声質がよくまとまっているし、女声もとくに後半が美しい。だがこちらも一本調子だった。 10:東京家政大学附属女子高等学校(女23) 課題曲→創価から一転、優しい演奏。とてもきれいに各パートまとまっている。スキャット部の動きはよく工夫され楽しめた。後半のmezzo「ALL_」の細かい動きはやや頼りなかったが、ラストは上手く決めた。 自由曲「なみだ」「うたをうたうとき」(2曲とも信長貴富)→効果音パートとメロディーのバランスが適切。altoの低音ロングトーンが安定。よくまとまった自然な音楽。 11:國學院大學久我山高等学校(混35) 課題曲→昨年と同様、少ない女声(13人)だがバランス的には良い。「上と下…」の16分音符でやや走った。fだとどうしても女声が消されそうになる場面があったが、よくまとまっている。shoutの力強さはダントツか? 動きのある、自然な音楽。終盤男声「LET'S_」非常に美しい! ラストの「JUMP UP!」ポーズも雰囲気出ている。 自由曲「祝福」(木下牧子)→男女が上手くバランスも良く溶け合っていて素晴らしい響き。「Oh_」の移り変わりで若干乱れることがあるが、男声の安定感が群を抜いている。女声も力強さがある。「祝福」をたっぷり、余裕のある表現で歌いきった。好演。 12:杉並学院高等学校(混40) 課題曲→男声の「はじめての_」がやや物足りない。だがfでも崩れない安定感、バランスが素晴らしい。shoutは楽譜通り処理。女声よく歌えている。男声も昨年まで見られた不自然な発声(“杉並唄い”)はなくなっている。情感あふれる演奏。 自由曲「日向木挽歌」(松下耕)→出だし女声ピッタリ、見事。soloは伸ばしでやや下がったが、よい。たまにten.が若干出ることがあるが、こちらも一言で表すと「安定」といった感じ。 13:都立八王子東高等学校(混30) 課題曲→今年も生徒が指揮&伴奏。女声は上手いのだが、杉並の次だと芯が入っていない声かなといった印象を受けてしまう。シャウト部のsoloは頑張ったが、緊張が出た感じ。演奏全体としてはもっと力で押せると良い、惜しい。 自由曲「歌よみのこころ―小町草紙から―」(千原英喜)→bass中心に安定しているが、やはりこちらも「押しきれない」印象であり、やや音楽的に一本調子になってしまった。ten.は若々しい良い声。 14:都立府中西高等学校(混40) 課題曲→出だしの「空を」やや下がった。「みんなが…」の16分音符のところは、よく歌詞を歌い、曲もきちんと流れた。shoutは若々しい、希望にあふれた感じが曲によく合っている。スキャット部でのsop.のsoloはちょっと高すぎる?(Cまで出していたとの報告アリ) 基本的には素直な演奏。 自由曲→「Ave,Maris stella」「Dona nobis pacem」(E.グリーグ)→男声が安定している。特にten.がきれい。sop.も良く声が伸びている。pでもよく揃っていて、安定感が素晴らしい(曲のおかげもあるが)。 以上が各校の講評です^^ そして以下が(自分の)審査結果です <課題曲>(5点満点) 1→杉並学 4.4 2→大妻中 4.3 3→府中西 4.2 4→久我山 4.1 5→豊島岡 4.0 6→国音附 4.0 7→東家政 3.9 8→創価高 3.7 9→桐朋女 3.7 10→都八東 3.5 11→共立女 3.3 12→日音楽 3.2 13→頌栄女 2.9 14→川村高 2.5<自由曲>(5点満点) 1→久我山 4.6 2→杉並学 4.5 3→府中西 4.5 4→大妻中 4.4 5→桐朋女 4.2 6→豊島岡 4.27→国音附 4.0 8→東家政 3.9 9→創価高 3.6 10→都八東 3.5 11→日音楽 3.4 11→共立女 3.4 13→頌栄女 3.0 14→川村高 2.9 <総合結果>(課×1.5+自 12.5点満点) 金→杉並学 11.10金→大妻中 10.85 3→府中西 10.80 4→久我山 10.755→豊島岡 10.20 6→国音附 10.00 7→東家政 9.758→桐朋女 9.759→創価高 9.15 10→都八東 8.75 11→共立女 8.20 12→日音楽 8.20 13→頌栄女 7.35 14→川村高 6.65 まず、今回は上位校がかなり接戦で非常に難しかったです。杉並・大妻・府西・久我山がトップ4校でどこが金でも良い演奏、豊島岡・国立音大・東京家政・桐朋女子・創価あたりまでが第2グループでこちらも接戦といった印象でした(まぁところどころ外しましたが。笑)。杉並学院に関しては、昨年までの男声の不自然な発声は改善してきました。まぁそれはそれで寂しい気もするんですが。笑 大妻中野は力のある女声合唱でした。ただ、現時点でこの2校が関東を勝ち上がれるかというのは分かりませんね。今後更なるレベルアップをしないと厳しいでしょう。頑張ってもらいたいです。 府中西は櫛田先生が今年で最後(定年)との噂、勝ち上がりたいところでしたが銅賞でした。國學院久我山は今年もあと一歩関東行きに届かず。ちなみに、課題曲の演奏で好みだったのは国立音大附・共立女子・大妻中野・東京家政と全て女声の学校。もしかしたら、「青ジャン」はそこまで混声圧倒的有利でもないのかもしれないなとも思いました。 最後に…会場での生演奏の審査(初めてでした)は難しかったです。でもテレビで見るより、実際に行って聴いた方が良いですね。とても楽しい時間でした。 ※この講評は全て一個人の感性により書かれているため、読んだ方に不快な思いをさせる場合があるかもしれません。その場合は申し訳ございません。