あっという間に6月。

今年も半分に差し掛かった。

無職になったのは2月。

未だに働いていない。

それには一つ理由があった。

親父の営んでいた店を片付け、完全に店を閉めること。

親父の店は賃貸で、毎月8万円の家賃が掛かっている。

この支出はどう考えても大きい。

それと、親父が管理していた銀行預金の整理をすること。

実は昨年10月に親父が入院して、殆どの銀行のカードと印鑑が行方不明になっている。

これは、銀行に通い詰めて調べていくと、親父は何故か口座別に印鑑を変えていた。

その印鑑の幾つかは未だに見つかっていない。

何処の銀行も『ご本人でなければ．．．』と中々改印等の手続きが出来ない。

そんな状況の中、お袋は何も出来ない。

だから、ぐちゃぐちゃに絡まった糸を解くように、一つ一つ銀行を何度も回って整理していた。

ところが、お袋は邪魔ばかりする。

銀行から書類が届くから、保管しておけと言っても無くす。

その為、何度も銀行通い。

挙句の果てには、偶にしか来ない状況が分かっていない弟に見せて、要らないと言われれば書類をほかす始末。

そんな折、お袋は出し入れのしていない口座の利息を受け取るために、カードと暗証番号を教えて欲しいと言われ

それを鵜呑みにして、そいつ等に全て渡して口座番号も教えてから、「詐欺にあった」と言ってくる始末。

そんな状況だから、唯一生き残った親父の保険金を入れた銀行口座のインターネットバンキングを申し込んで

危なっかしいお袋に全て渡さず、必要なときだけ俺がお袋の口座に送金する手筈を準備していた。

その手続きがほぼ終わり、お袋にもちゃんと何度も説明していよいよ実行しようとしていた。

ただ、その口座の通帳は未だお袋に渡しておいた。

それと同時に、銀行印が見つからない定期預金の口座を何とか改印して、下ろせなかった定期預金の手続きをするため

これもちゃんとお袋に説明して、未だ下ろせない定期預金の通帳を持って帰った。

それは、イチイチ実家に行かなくても、直接銀行に手続きに行くためと毎回お袋に銀行通帳を貸してもらっていたが

毎回、探すのが大変なのでとりあえず預かった。

そしたら、その持ち帰った直後、バイクに乗っていたら携帯が鳴ったので電話に出るとお袋は現在下ろせる、保険金の

入った銀行口座を俺が持ち帰ったと言い出し、泥棒呼ばわりさせるような言い草で電話を掛けてきた。

それには流石に切れた。

結局、お袋は俺に今下ろせる金をコントロールされたくないと言うのが本音。

ここまで、数ヶ月俺が仕事もせずにやってきたことが本当に馬鹿らしくなり、持ち帰った定期預金の口座を書留で

実家に送った。

その書留には手紙を添えた。

『もう、俺は一切関わらない。親父には申し訳ないが、あんたとは縁を切る』

そんな内容だったと思う。

何故ここまで俺が怒ったかというと、銀行のことだけではない。

店の整理はお袋が俺一人にさせるのが嫌みたいで、殆ど進んでいない。

だから、根気よくお袋が「しんどい」と言わない日だけ、一緒に店に行って少しずつ片付けていたが、はっきり言って

そんなんじゃ、埒が明かない。

お袋に「俺が手をつけていいところは何処？俺一人がやるから」と言っても、俺が何か奪うとでも思っているのか

それも許せないようで、拒み続けてきた。

そんな事が重なって、俺はきれた。

お袋は昔から金に汚い。

それが一番分かるのが、俺が結婚したときのこと。

うちは嫁さんと知り合ったのが、当時勤めていた会社の取引先だったので、色んな柵があるからハワイで家族だけ

呼んで挙式した。

披露宴はパーティー形式を取って、その後会社関係や友人を呼んで行った。

それに納得がいかなかったうちの両親（恐らくお袋）は自分達がするからと言って、料亭を取って親戚に声を掛け

顔合わせ的な披露宴をした。

それが終わった後、お袋が言った言葉に呆れた。

「お祝いは私らが預かっておくわ」

そう言って、祝い金は一銭も俺達に渡さなかった。

結局、祝い返しだけさせられた。

もう直ぐ80に手が届くお袋の金の汚さには閉口する。

2月から5月までの時間が全く無駄。

先月末、心療内科の主治医に「もう、薬は飲まなくてもいい」と言われてから、精神的にダメージを受け

未だに薬を抜けないのはこれが原因だ。

俺にも生活が有るし、もうこれ以上お袋には関わっていられない。

もう、お袋がどうなっても俺は知らない。

俺は絶対にお袋が許せない．．．