二酸化チタン光触媒とがん治療
(1)環境浄化材料 として 二酸化チタン(金属酸化物TiO2)に光が当たるとマイナスの電気を持った電子とプラスの電気を持った正孔(電気的に中性であったところから電子が出て行った後の抜け殻)ができます。この電子と正孔は水や酸素と反応してOHラジカル(オゾンと紫外線を反応させるとできます)などの活性酸素を作ります。活性酸素は非常に大きなエネルギーを持っているため、環境中の有害物質(ホルムアルデヒド,トルエン、キシレンなどの有機物)を炭酸ガスなどに分解・無害化することができ、大気中の汚染物質も酸化して浄化し、無害化することができます。この技術は約30年前に偶然発見された日本発の技術なのです。その他、悪臭の分解や毎日少しずつついてくる汚れの分解、曇り止め、タンカー事故で流れ出した原油の分解処理、細菌やかびの繁殖防止などさまざまな用途に使うことができます。(2)二酸化チタンは食品添加物としても利用されている安全無毒な物質です。歯磨き粉、顔料、繊維、紙、ゴム、化粧品などにも使われています。(3)最近ではがん治療への応用が考えられています。酸化チタンの微粉末を体内に入れると、正常な細胞は排出しようとしますが、がん細胞は取り込もうとします。十分取り込んだところで光を照射すると活性酸素が発生、強力な殺菌力と有機物の分解作用でがん細胞を死滅させることが出来るのです。光を当てやすい体表の皮膚がんはもとより、体内にはカテーテルを用いた紫外線照射によって胃がんなどの治療も可能と考えられています。また酸化チタンをセラミックスにコーティングすることにより、新型肺炎(SARS)ウイルスを短期間で死滅させる実証試験に成功しています。