仮想水ー暮らしのなかの“見えない水”バーチャルウォーターについて
←シケケンの泉(メキシコ・ユカタン半島)私たちが食品や日用品のかたちで間接的に消費する水は仮想水と呼ばれています。仮想水の概念が生まれたのは、1990年代初めのことで、英国の地理学者トニー・アランが水資源の少ない中東で、水をめぐる紛争があまり起きていない理由を説明するために提唱しました。中東諸国は食料を輸入することで、食料生産に必要な水を使わずにすんでいると、アランは考えました。その後、水の消費量を分かりやすく伝え、水管理に役立てるために、オランダ人科学者アリエン・フークストラをはじめとするオランダのトエンテ大学とユネスコの研究者たちが、身近な商品の仮想水を試算しました。例えば牛肉1キロなら15000リットル、鶏卵1個なら3340リットル、 コーヒー1杯なら140リットル、牛乳コップ1杯なら200リットル、 ジーンズ1本なら11000リットル、綿のシーツ1枚なら10600リットル、 プラム1キロなら1612リットル、トウモロコシ1キロなら909リットル、 これはそれぞれの商品の生産に必要な水の量です。仮想水の輸出量が最も多いのは、牛肉と穀物を輸出している地域です。北米と南米からの仮想水の輸出は、主に大豆、穀物、牛肉、コーヒーの輸出に伴うもの。ヨーロッパ諸国の間では227兆リットルが輸出入されています。日本は、輸出量の15倍もの仮想水を輸入しています。輸出入量の差が世界で最も大きいのです。イタリアは仮想水の輸入量が輸出量を49兆リットルも上回り、輸出量の差がヨーロッパで最大です。アフリカからヨーロッパに向けては、主にオリーブオイル、綿、ピーナッツ、ゴマ、皮革製品の形で仮想水が輸出されています。ここで問題なのは肉類を定期的に食べる人は、野菜中心の食生活を送る人に比べて、水を間接的に消費する量が多くなることです。皆様はこの問題をどのように感じられますか?