私は私的な名刺を作っていて「熊本県垣根愛好会会長」の肩書きを持っている。
残念ながら熊本県垣根愛好会なるものは私が勝手に作った実在しない架空の団
体で会員は私一人である。
実家の畑、建物の周囲約90メートル近くを垣根が取り囲んでいる。年に4回ほど
垣根の剪定を定期的にしている。
電動の機械(ヘッジトリマー)は持っているのだが、身体のためと切れ味がすぐに
悪くなるヘッジトリマーは使わず、川尻(熊本市南部にある刃物の街)の大きな鋏み
でチョキチョキと手作業で行っている。
大切にしている垣根。自分の心を手入れしているような錯覚?に浸りながら剪定をしている。
一昨日の土曜日はこの紅かなめ(レッドロビン)が赤い芽を出し終わったところで剪定をした。
このまま、一月も放っておくと伸びすぎて新芽が固くなり剪定の時間と後片づけがたいへんに
なる。そのため、赤い芽が出たばかりだが早めの剪定となった。
ところで、垣根は地球温暖化防止(やや大袈裟だが)、剪定作業は美的景観の追求、事務的
な仕事では味わえない視覚的な達成感を味わえ、そして何よりも私の健康増進、体力増強と、
いろいろといいところがある。
近年、もう一ついいところがわかった。それは、垣根の剪定をしていると、散歩、畑へ向かう
途中の人たちなどが声をかけていってくれることである。
「今日は帰ってきとったですか」とか、「よう、がま出す(精出す)なぁ」とか。
是くらいの挨拶で終わればいいのだが、中には30分近くも立ち話に及ぶときがある。
一昨日は隣家の四歳年下のM君が通りかかり料理談義となった。M君の料理の腕前は
プロ並みと聞いていた。
私がそばを打つというと、「麺はぶつぶつ切れんですか。やっとわかったですよ、打った麺が
細切れにならない方法が。10年以上かかった」と話してくれた。また、「白身の魚をピーナツ
やアーモンドなどを粉にしてまぶしてフライパンでじっくりと焼いて食べると旨い」とも教えて
くれた。
立ち話しは30分以上にも及び垣根の剪定に影響が出るほどなのだが、久しぶりの
幼馴染の後輩との会話は楽しいものであった。
垣根の剪定作業は私にとって一石二鳥どころではない、一石数鳥のものを得られる肉体
労働である。