今、春の日差しの中で先生が小中学生の児童生徒のいる家庭を訪問する、
いわゆる家庭訪問の時期らしい。
小学校低学年のお子さんを持つお母さんと家庭訪問のことが話題となった。
その時のやりとりである。
「家庭訪問の時期らしいけど、いろいろと気を使うんですか」
「ええ、そりゃたいへんですよ、家の中が散らかっているものだから片付けが」
「いつもの状態を見せればいいじゃないですか」
「そういうわけに行きませんよ。1階にある物を2階へ上げたりして隠すんですよ、
そして家の外の草取りもしたり大変です」
「それは大変、家庭訪問の前に疲れちゃうんじゃないんですか」
また、もう一人のお母さんは家庭訪問の前に障子張りをしたと教えてくれた。
誰でも整理整頓、綺麗に掃除が行き届いたところにお出で頂きたいというのが
本音であろう。納得のいくところである。
ところで、私が小学校の頃の家庭訪問のとき、母が片付けを懸命にやっていた
という記憶はあまりない。現代のように、家の中に物がなかったから散らかること
がなかったのではないかと思っている。
今から40年以上も前の家庭訪問は、お酒が好きな先生には「飲みなっせ」と
言って、お酒を出していた。先生は何軒も訪問するうち酔っ払ってしまい、
最後の家を訪問する頃には真っ直ぐ歩けなくなり、リヤカーで先生を運んだとい
う凄い話を聞いたことがある。
そんなことがあっても、当時は何の問題ともならなかった。小さな学校だった
せいもあるが、先生と生徒、先生と保護者の三者同士の一体感が、ものすごく
あったように思う。
私が小学6年の頃、父はPTA会長をしていた。我が家への家庭訪問の日、
担任の先生が帰ったあと、なぜか教頭と給食の先生(女性)が訪ねてきた。教頭は
酔いつぶれ、給食の先生は帰る足がなくなり、我が家へ泊まることになった。
翌日は我が家から学校へ出勤。大らかといえば大らか、今では考えられない、
すごい時代だったなと懐かしく振り返っている。