仕事先のビルの玄関を出てすぐ交差点の横断歩道の前に立つ。左へ行けば
バス停で真っ直ぐ帰宅。正面へ向かえば飲み屋街。どちらへ足を運ぼうかと私の
二つの人格が闘いを始める。
ほとんど真っ直ぐ帰宅の方が、正面へ向かう方にすぐに打ちのめされてしまう。
ということで、ついつい街の灯りの下で一杯ひっかけていくことになる。
格別の不満が妻や子供たちにあるわけではない、また家庭不和というわけ
でもないのになぜか真っ直ぐに帰宅したくないのである。
このような夕暮れ時を迎えるようになったのは数年前からである。職場以外の人との
出会いや仕事と関係のない話を欲しているのかも知れない。それとも、ただただ人恋
しいのかも知れない。まっすぐ帰ることがなぜか寂しいのである。
そんな寂しさを紛らす日が数日続くと妻が不機嫌になる。
ある朝、携帯を見ると一通のメールが入っていた。妻からで
「私のどこに不満があるの」と。不満はない、だから返信はしない。
私は街の灯りの下で寂しさを紛らし、一方の妻は私への不満を増幅
させているようである。それでも、完全に治癒することはないだろう、私の
「直接帰宅拒否症」という症状は・・・・・・。