昨日、病院の中央処置室のベッドに寝かされ点滴を受けた。
ベッドはカーテンで仕切られ、点滴を受ける私がそこに横たわ
っていることを処置室に入ってくる患者さんは知らない。
点滴は2時間、ポタリポタリと落ちる液を見ていると、患者と
看護師さんの会話が聞こえてきた。どうも注射を打ってもらいに
きている様子だった。
「この前の巾着よく出来ていましたね」
「えー、若い頃、洋裁学校に行っていましてね」
「そうでしたか、どおりで綺麗にできていると思いました」
「でも、結核にかかりまして洋裁の道を断念したんです。でも、私は運が
よかったですよ、私より半年前の結核の患者さんはほとんど亡くなって
いますから」
「そうでしたか」(以下、略)
患者と看護師、何度も病院を訪れお互いに顔見知りなのだろうが、患者も
何かを話したい、それを逃さず、話題に入って患者と会話を交わす。注射を
打つ間のたったの数分であるが、患者さんの心も安らぐひと時ではないだろ
うか。
点滴を入れる刺さった針が腕に鈍痛を感じさせ重くなってきた。でも、数組の
患者と看護士の会話は、その人の日常、優しさ、楽しみをベッドに横たわって
いた私に伝えて癒してくれた。小さな幸せに出会った気分であった。
小さな幸せはどこにでも転がっている。