|
カテゴリ:童話・詩
『竹子とタイ男の物語』 「おはようございます。植木屋ですけど、竹の剪定に参りました」 「はーい」 「ちょっとちょっと植木屋さんが来たわよ」 「ひょっとしたらあんたと私は今日限りでさよならかもね。私は伐られて、あなたはタイヤ業者に引き取られる」 「とんでもないこと言うなよ、ここのオバさん絶対に竹子を切らないと去年言っていたじゃないか」 「あんたの言うとおりならいいけどね。でもさ、もうタイ男の真ん中に芽を出して何年になるのかなあ」 「ここの息子が玄関脇に俺を置きっぱなしにしてからもう5年くらい経つのじゃないのかな」 ということを竹子とタイ男が話していると、 「植木屋さん、今年もタイヤを貫いている竹は伐らないで下さいよ」 「へぇー、上に上げてね、そりゃ大変だ」
「タイ男聞いたかい、今年も私は伐られない、そしてずっと伐られることがないんだ。ワーイバンザイ」 それから数日後のある日、通りすがりの母娘は 「お母さん見て見て、タイヤの真ん中を竹が貫いているわ」 「そうね、珍しいわね」 「でも、タイヤ可愛そうな気がする。何でかと言うとどこへも行かれないじゃない」 「そうね、でもそれはわからないかもよ。そのことはタイヤに訊いてみないと、竹とこうして居られることが嬉しいかも知れないし」 そのあとの50歳代くらいの夫婦は 「タイヤが夫で竹が奥さんと考えてみるのも面白いな」 「それは愛する夫を妻が絶対に離さないぞと言ってるようにも取れるから」 「よく、言うわ。まるで我が家とは反対ですね」 二人は竹子とタイ男に背中を向け笑いながら去って行きました。 そのあと、竹子とタイ男に向かって と、言ったのは竹子の姉でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.03.03 23:02:26
[童話・詩] カテゴリの最新記事
|