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2009.10.08
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カテゴリ:童話・詩

             『竹子とタイ男の物語』

「おはようございます。植木屋ですけど、竹の剪定に参りました」

「はーい」


「ちょっとちょっと植木屋さんが来たわよ」

「なんだよ、朝早くからうるさいなぁ」

「ひょっとしたらあんたと私は今日限りでさよならかもね。私は伐られて、あなたはタイヤ業者に引き取られる」

「とんでもないこと言うなよ、ここのオバさん絶対に竹子を切らないと去年言っていたじゃないか」

「あんたの言うとおりならいいけどね。でもさ、もうタイ男の真ん中に芽を出して何年になるのかなあ」

「ここの息子が玄関脇に俺を置きっぱなしにしてからもう5年くらい経つのじゃないのかな」

ということを竹子とタイ男が話していると、

             81.jpg

「植木屋さん、今年もタイヤを貫いている竹は伐らないで下さいよ」

「はい、わかりました」

「このタイヤを置いた東京で働いている息子が5年ぶりに帰ってくるというから、そのときに竹は伐らないでタイヤを上に持ち上げさせてタイヤを取らせるから」

「へぇー、上に上げてね、そりゃ大変だ」

 

「タイ男聞いたかい、今年も私は伐られない、そしてずっと伐られることがないんだ。ワーイバンザイ」

「そんなに喜ぶなよ、ここの息子が帰ってきたら俺はタイヤ業者に出されるんだぞ、そのときは竹子とバイバイサヨナラってことだ。大体、竹子は俺がここに置かれたあとに生まれたんだから妹ってこと、もう少し兄貴と思って言葉遣いを気をつけたらどう」

竹子はタイ男の言葉に黙り込んでしまいました。

           82.jpg

「やぁ、竹子きれいになったなぁ」

「ええ、1年に一度だけどサッパリしたという感じがするわ」

それから数日後のある日、通りすがりの母娘は

「お母さん見て見て、タイヤの真ん中を竹が貫いているわ」

「そうね、珍しいわね」

「でも、タイヤ可愛そうな気がする。何でかと言うとどこへも行かれないじゃない」

「そうね、でもそれはわからないかもよ。そのことはタイヤに訊いてみないと、竹とこうして居られることが嬉しいかも知れないし」


そのあとの50歳代くらいの夫婦は

「おい、見ろよタイヤ貫通竹というか、珍しい光景だな」

「そうね」

「タイヤが夫で竹が奥さんと考えてみるのも面白いな」

「それはどういうこと、なぜ面白いの」

「それは愛する夫を妻が絶対に離さないぞと言ってるようにも取れるから」

「よく、言うわ。まるで我が家とは反対ですね」

「アハハハ」「アハハハ」

二人は竹子とタイ男に背中を向け笑いながら去って行きました。

そのあと、竹子とタイ男に向かって

「あなた達はいいわね皆から注目されて」

と、言ったのは竹子の姉でした。


いつも利用しているバス停の前のお宅にある玄関先の光景です。






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最終更新日  2019.03.03 23:02:26
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