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カテゴリ:日記
私が高校生の頃、我が家は父は会社へ勤めながら米、みかんを栽培する兼業農家だった。 母はいろいろな野菜を作って市場へ出荷していた。 夏の日が長いときなどは父は会社へ勤める前に畑へ出て仕事へ行き、そし仕事から帰っても 農作業に精を出していた。それは我が家だけでなく周囲はそのような家ばかりだった。 そういう環境にいたので高校生と言えども農作業をよく手伝わさせられた。 手伝っていたのはミカン園の草刈。その当時、未だ我が家にはエンジンの草刈機は無く 母と二人で鎌で草刈をしていた。 我が家から1キロほど離れたミカン園は山間の急斜面にあった。 数百メートル下に一軒家があったが山間に響く音は母と私二人が草を切る音だけ。 静寂、その時、母と二人だけの空間に世の中から隔絶された孤独を感じた。 目に入ってくるのはミカンの木と草と、そして周囲の山々の緑だけ。 俺はこの先、どのような人生を歩んで行くのだろう、今、何かこういうことをしたいという 目標もない、これでいいのだろうかと思いながら鎌を振っていた。 今、そのミカン園の木は全て枯れてしまい、数本の柿の木が植わっているがここ数年、 その場所へ行ったことはない。 あの時の静けさ、そしてあの時思ったことは、誰も居ないマンションの一室の中に居る今と 少し似ているのではないかと思った。 あの時思ったことから、もう45年以上の月日が流れた。
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最終更新日
2015.01.13 11:10:01
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