ラストシーン
子供の頃から、どんなに願っても希望が叶う日なんて滅多に訪れなかった。子供の頃から大好きだった東京という街、捨てる日が訪れるなんて想像もしなかった。その両方が来る日が有るなんて…。最後の勤務を終え、国立駅の改札口を抜けると桜色に染まっていた。このところの温かさに背中を押され、一気に見頃を迎えた大学通りの桜並木。嬉しいな。こんな最高の演出をしてくれて。改まって部長に挨拶をしたとき思った。ヤバイ、泣く。もう、東京写真部に来ないという事だけではない。自分が生まれ育った、東京と今、決別するのだ。そういう感情。思い出をいっぱいくれた…。東京なのに…。大阪に戻り、この2年間の事を思い出せば必ずや楽しかった事しか現れないだろう。今日はそのラストシーン。舞台の準備は整った。どんな未練が有ろうと、ハッピーエンドにしよう。国立の桜並木を走り去るなんてね。カメラはこの位置。じゃあ。行くよっ!