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恋する着物生活

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きものせいかつコンシェルジュ ともみ

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2005.04.29
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カテゴリ:きものめぐり
人間国宝 久保田一竹。 室町時代には描かれていたが、いつしか「まぼろしの花」となってしまった「辻が花」を現代に甦らせた着物作家。 衣類の枠から着物を解き放ち、美術工芸品に高めた芸術家。 2003年4月26日、逝去。 享年85歳。

着物を始めて1年ちょっと。 久保田一竹の作品は一度だけ手にしたことがある。 いろいろご縁のある、素敵な女将さんが経営する「高級着物 専門通販ショップ きもの人」でのこと。 「こだわりの着物」を品揃えし、「着物で人を素敵にする」のがモットーの、大らかで明るい女将さんに着物についていろいろ教わっていた頃のこと。 

そんな日々のことを思い出しながら、4/27、呉服屋さんのUママのお誘いで「一竹辻が花 遊幻万華」の展示会へ行く。 超高級・超高額着物であるのは知ってのこと、戴いたお食事の「食い逃げ?」に少々胸が痛みながらも、会場に足を踏み入れる。 ちょっぴし緊張のドキドキと、好奇心満々のワクワク。 お客さまは・・・あんまりいない! わたしのような若造も。
 「ま、まずい。」 
この感覚が分かる貴女は「展示会なるもの」をご存知ですね。^^; そんな心中を察してか、Uママは優しい。「お勉強だとおもってみればいいのよ。」と。

黒を基調にした薄暗い場内。 中央には竹林の和の室礼があり、四方を一竹の着物たちが囲んでいる。 幽玄な場内の幻想的なライティング。 豪華絢爛にして慎ましやかさも感じさせる上品な着物たちの表情を照らしだす。 これこそ「遊幻万華」の世界。 沢山の美しい着物たち。 上品な光沢放つを金糸・銀糸を使った織物に、はんなり上品な地色。 そこに絞りの染めの絵羽模様で椿や藤など様々な「花々の語らい」の世界が繰り広げられている。 そしてこれが「辻が花」。20050428 辻が花

ここでわたしは「辻が花」というものをちゃんと理解していなかったことに気づく。 漠然と「まぼろしの花らしきものがあって、花々が優雅に散りばめられている着物」と思っていた。 この可愛らしくも、不思議な形をした花。 自然界には、この世の中には存在しない。 誰も本物を見たことがない。 架空のお花。 なんだか言い表しようの無い感覚のもと「あ、あった」と小さくつぶやく。

一体なんでしょう? 仮絵羽の中にこのお花を見つけたときの、嬉しいような、懐かしいようなこの気持ちは。 この感覚は、例えば夏のアルプスのひろーい雄大な地で、世にも珍しい高山植物を一輪見つけた時のようなもの? それとも、経典を求めて遠く天竺まで苦難の旅路を続けた三蔵法師ように、苦労の末に「やっと見つけた」というようなもの? 「辻が花」を追い求めて生きてきたわけでもないのにわたしであっても? 「一竹」が生み出した時空を越えた、悠久の幻想の世界。 美しいものは、人にその感覚を体感させる。

「辻が花」。 きっとこの花は、室町時代の美意識や美学、芸術の中の審美的価値観は勿論、描かれていた頃の人々、誰でもが「幻の世界」に求めた、夢や願い、理想や精神性を表していたのでしょう。 





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Last updated  2005.05.16 14:15:49
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