現場を知らない人間が、なぜ現場を管理するのか?
大手家電に吸収合併された某老舗の家具会社元社長。実は店頭に立って家具を販売したことは1度もないそうな。このことと関連があるのか。「店に入ってきたお客様には、お客様側からアプローチがあるまで、店員は話しかけてはいけません」などとトンチンカンな命令を社長就任時に発し、ベテラン店員を戸惑わせたとか。「そのやり方では、お客様は店内を見学するだけで出ていってしまう」。確かに。でも、私たち宣伝販売の世界でもそうだよ。ただの1度も現場に立ったことがないおエラいさんが、「コロナ対策のため、試食品には蓋をしてトレイに乗せましょう。そして、お客様の方から取っていただきましょう。絶対に販売員が渡してはいけません」と、見当違いな指示を飛ばす、こんなメーカーやスーパーチェーンも、一部にあるのだ。試食品に蓋をすることや販売員の手渡し禁止が、どれだけコロナ予防に効果があるのか、大いに疑問な上、ぶっちゃけ、こちらから時に手渡しをしてアプローチしないと、お客様はなかなか試食しないよ、、、だって、皆、心では恐れているんだから、、、試食したら買わなあかんのやろうな、と。そこで、手渡し。笑顔で、差し出されたら、人間、つい受け取るわな。受け取ったからには、食べるわな。「おっ、これ、いけるやん!」ここで商品に興味を持ち、販売員のトークに耳を傾ける。聞いているうち、「ふうん。そんなんなら、一度買うてみようか」。この繰り返しで、売上が伸びていく。一昨日のフルーツ・ティーの宣伝販売が、終了時に売場がスカスカになったほどの結果を出すことが出来たのも、販売者である私が積極的にお客様にトレイを差し出し、声かけしながら、必要な時は手渡しして飲んでいただいたことも理由の1つなのだ。物事を、机の上、すなわちアタマだけでとらえ、体験を伴う他の身体器官での感知をハナからバカにしている人間が、汗を流して実際にカネを生み出している現場労働者を「管理」して、規則規則でがんじがらめにする。どこの業界もそうなんだろうけれど、天職とも感じるこの仕事も、もう辞めたくなってきた。