試食は復活した。
金曜日は、滋賀県彦根市にある大型店舗で、日本三大蕎麦の1つである出雲蕎麦をデモ。開店前、従業員出入り口で入店手続きをすませるや、どこからか「おねえさん、お久しぶりぃ」の声が聞こえてきた(注。関西では、老人をのぞけば、年齢に関係なく知らない女性に対しても「おねえさん」と呼びかける)。振り返れば、コロナ禍前に幾度となく現場で顔を合わせた、他の派遣会社所属の同業者。期せずして、その声に呼応するかのように、あちらこちらから「こっこさん、ご無沙汰〜」「元気でいた?」「何年ぶりかしらね」の、声、声、声。全員が、顔見知りの同業者たちだった。ああ! 皆、いろいろあってもこの仕事から離れなかったのね、と半ば感極まりつつも、デモンストレーターも含めて明らかに店舗関係者以外の人間があわただしく行き交う異様な雰囲気に驚いた私は、近くで身支度をしていた同業者に尋ねた。「今日、何かあるの? もしかして、特招会?(特別招待会。要はいつも買い物に来てくれる常連さんに向けたセール日)」「いえ、特招会ではない。店をリニューアルしたので、それを記念してのオープン祭」。「ははぁ、、、。なるほど」。売場でメーカー営業2人と合流し、いよいよデモへ。バックヤードで営業さんたちが次から次へと麺をゆがき(売場でゆがくと非常に危険なので)、それに私がめんつゆをかけながら表の売場で宣伝販売。このスタイルで、夕方6時までに、実に550人近い試食が出た。大盛況。大袈裟ではなく、お祭り。試食は、こうでなくっちゃ。売上よりも、まずはお客様のノリなのだ。この日のデモでうかがえたよ、試食は復活したとね。試食と言う名のライブが終わった後に見上げる空の美しいこと。晴れていても、雨が降っていても、陽が照りつけていても、風が吹いていても、だ。その美しい空が見下ろす、われわれ人間が作ったものもまた、すべてが美しい。写真は、金曜日の現場の最寄駅、南彦根駅。