私のベスト体重は60キロだと言った人。
以前、会社の定期健康診断で過体重を指摘され、ウェイトコントロールを始めたものの、食事を減らしても運動をしても効果が出ず、そのうち体重計が示す数字に一喜一憂するようになった知人のケースを記事にした。
今日は、もう少し詳しくその話を紹介する。
彼女とは仕事関連で知り合ったのだが、なるほど、初対面からして
「少しふっくらしているな」
とは感じた。
もっとも、あくまで「少し」。
言い方を変えれば、ぽっちゃりで、そういうタイプが好みの人にとっては
「可愛いな」
「フンワリした雰囲気だな」
ととらえられることだろう。
そんな彼女が、健康診断で
「160センチの身長に63キロは太り過ぎですね。せめて55キロ、出来れば身長−110の50キロが望ましいですね」
と言われ、過体重によるリスクもコンコンと聞かされたのだ、、、すなわち、糖尿病などの生活習慣病を発しやすいとかガンにもなりやすいとか。
真面目で努力家の彼女は一念発起。まずはご飯や麺などの炭水化物をこれまでの半分の量とし、代わりに野菜や海藻を積極的に採るようにした。
「もちろん、大好きなスイーツは厳禁。なるべく歩くように生活スタイルを変え、スポーツジムにも入会」。
ジリジリと体重は減り始め、8ヶ月後は60キロに。
ところが、そこで止まってしまったのだ。
「もう、何をどうやっても、60の数字から体重は動かない。若い時からほっそりしていた母など1日にお菓子や果物をパクパク食べ、運動もしないのに全く太らない。娘の私はケーキもシュークリームもみかんもブドウも必死で我慢し、ジムで一生懸命に走ったり自転車を漕いだりしているのに、痩せない」。
かくして、迎えた定期健康診断。またも同じことを言われた。
「160センチで60キロは太り過ぎ。太っていると、高血圧やら通風やら、、、」。
そんなことはわかっている。
わかっているから、痩せるよう努力している。
努力しているけれど、痩せないのだ。
60キロから、断じて体重計の針は動かない。それどころか、0,1から0,5の範囲で、時折り増えていたりする。
彼女は次第に自分の体重が呪わしくなってきた。
そこへ、アメリカ研修の話が。総合職のキャリア組にいた彼女は、
「仕事のステップ・アップになるかも」
と、いち早く応募し、海を渡った。
結果的に、このアメリカ研修が、仕事面ばかりでなく、ウェイトコントロールも含めた彼女の意識をも変えたのだ。
「アメリカに着いて、空港にいた時から感じたのは、まず、160センチ60キロの私よりずっと立派な体格の女性がゾロゾロいること。でも、それを気にしているふうでもない。二の腕の肉がブヨブヨ垂れていても、お腹が3段に重なっていても、ゾウみたいな足でも、別に隠そうともせず、カラフルなタンクトップや身体の線がクッキリと出るTシャツを着ていたり、おしゃれなサンダルをはいていたり。で、家族や友だちと楽しそうにお喋りして、笑い合ったりしながら、大きなアイスクリームを舐めていたりする」。
要は、人生を謳歌しているさまを、まざまざと見せられたのだ。
「私は私が着たい服を着て、食べたいものを食べるわ。体型がどうあれね。そもそも体型なんて、その人の勝手でしょ」
こう言いたげ。
このことは、空港を出た後、ホテルや研修中やレストランや売店などでも度々感じられたそうな。
意識の変化は、仕事はもちろん、生活の上でも大いに反映され、彼女を囚われから解放し、ハッピーへと導いていく。
「よく考えたら、私、健康診断で引っかかったのは、体重だけ。他に問題点はない。それを、太っていたら将来これこれしかじかの病気になりやすいの何のと世間では騒ぎ立てる。だいたい、標準体重なんて誰が決めたの? もしかすると、体重が60キロより下がらなかったのは、お前にはこの体重がベストなんだよと、身体が教えていてくれたのかも知れない」。
確かにね。
プラス、食べることが好きで食文化にも関心があった彼女は、だからこそ、現在の職場に就いたのだ。その興味と適性と向上心を、「標準体重」と「肥満のリスク」なるもので一元的に切ってはいけない。
彼女のケース。血圧計が示し出す数字に振り回されている私にも参考になりそうだ。
本当に、標準血圧なんて、いつ、誰が制定したのか?
写真は、我が家の朝顔。
2階までツルが伸びてきて、見事な花を咲かせた。