高齢者の事故はそんなに多いのか?
東池袋で乗用車が暴走し、横断歩道を渡っていた母子2人が死亡、 運転していた男性、同乗していた妻を含む8人が重軽傷を負った事故。 この事故のニュースの運転者が87歳と聞いた時、 これでまた「高齢者が事故」と大騒動になると心配したのでしたが、 案の定、マスコミも世間も「高齢者の運転をなんとかできんか」の大合唱となっている。 亡くなったのが31歳のお母さんと3歳の娘さんで、あまりに痛ましく、 事故の加害者に人々の怒りが向くのは当然ではあります。 あの道は広く見晴らしもよく、どうしてそんな所でスピードを出して 人を轢いたのか、アクセルが戻らないと語ったと伝わっていますが、 だったらブレーキを踏めよ・・と誰だって怒りますよ。 認知症なんじゃないか、だから年寄りは運転しちゃダメなんだ・・と 思考が行くのは、分からないでもない。 しかし、その運転手が87歳だったからといって、 それで一斉に高齢者は免許返納をすべき・・ と世論が動くのはどうなんだろと思うわけです。 暴走したのが未成年の子だったら「20歳過ぎるまで運転させるな」と騒ぐだろうか 運転下手な女の人だったら「女に免許取らせるな」となるだろうか ならんでしょ。あくまでも事故を起こした「その人」の責任ということで、 この事故はこんなに大きく、毎日毎日報道されなかったはず。高齢者に容赦ない世の中がある。 高齢者を庇おう・・ということではないですよ。なりかけ世代として、言い訳しようということでもないです。 私も、高齢者の運転には不安を感じてはいますし、 今後、なんらかの工夫は必要だと思ってもいます。 ただ、世間はあまりに感情的に決め付けがちではないか。 2018年に死亡事故を起こした75歳以上のドライバーは 前年比42人増の460人で全体に占める割合は14.8%でした。 「これは過去最高」だとマスコミは鬼の首をとったように指摘していますが、 高齢者が増えているのだから、年々、高齢者が起こす事故が増えるのは当然なわけで。 75歳以上の人口は1747万人です。全人口の13,8%。 つまり全ての年齢層をみても、事故率は平均的だということです。 もう少し詳しく警視庁の統計を詳しく見ましょうか。 平成29年の死亡事故を起こした人口10万人当たりの年齢別は、 16~19歳 11,4人 75歳以上 7,7人 85歳以上となると14,6人とぐんと多くなりますが、 80~84歳でも9,2人と未成年より低い。 ましてや、70~74歳 4,1人、75~79歳だと5,7人。 16歳から19歳の事故率の方が余程多い。 マスコミが「またもや高齢者が事故」と毎回、煽るだけ煽るので、 我々は高齢者がやたら事故を起こしているような 印象を持ってしまっていますが、 高齢者の事故だけ特別多い、と言うわけではないのです。 高齢になると運転を控える人が多くなるせいもあるかもしれませんが、 世の中のほとんどの高齢者は事故を起こさずに運転しているということです。 その事実を私達は忘れてはいけないのだと思うのです。 ネットのコメントを見て見るに「今後65歳以上が事故を起こしたら死刑にせよ」だの、 「法律で高齢者は運転させないようにせよ」だの「高齢者はマニュアルの車だけにせよ」 だのこれ、人権問題じゃないの・・と思う程の言葉が飛び交っている。 誰でも必ず年を取る。 明日は我が身だと考えられないのだろうか。 何度も言いますが、もちろん高齢者の免許返上ということは、 必要だし大きな課題ではありますよ。それはそれとして、 かなり誇張されて報道されている事実はある。 先日、高校のOB会のゴルフコンペに参加しました。 こういう会だとどこでもそうでしょうが、参加者はほぼ高齢者で、 私なんか、最も若い方。一緒に回った先輩がなんと89歳で、 18ホールしっかりフツーに歩いてスコアは我々より好成績でした。 でも、その方ですらまだ、先輩の中では大きな顔なんかできず、 もっと年長でもっと元気に回られる方は、何人もいらっしゃるのだとか。 もちろん、ご自身で運転して来られたそうですよ。 だから女は、だから若者は、だから関西人は・・と一緒くたに論じられないように、 一つ、高齢者の事故があったことで高齢者全般を論じる危険性。 そこは、もう少し気をつける必要があるのじゃないですかね。でないと、本質を見失う。