ネットニュースの知的レベルがどんどん落ちている
視聴した番組の内容をそのまま記事にする安易な記事が増えていますが、気になった27日のデイリースポーツの記事。 タイトルが『感染症専門家が警鐘 コロナ感染「2カ月後にはヨーロッパに近い状況に」』土曜の日本テレビ「ウェークアップ」で、新型コロナウイルス感染が急増しているドイツ、韓国と日本の状況を比較して、長崎大学大学院教授・森内浩幸氏が「ヨーロッパとの違いはワクチン接種の開始時期が遅かったからで、日本も2カ月後にはヨーロッパに近い状況になるということはいえると思います」と警鐘を鳴らした・・とかなりセンセーショナルな内容なんですね。 当然のように、この記事にコメントが続々と付き、その大半が「専門家という人達は、いい加減な予想ばかり」「分かってもいないのに、煽る目的のでたらめな見解を言う」などと、感情的な批難の反応が大多数。 この番組、たまたま見てまして、森内先生は、「日本はヨーロッパよりワクチン接種が遅れているため、2か月先には抗体の量が、ヨーロッパ並みに減るということは言える」ということを言っていて、ヨーロッパ並みに感染者数が増える、とは言っていない。 この先生は、TVに出て来る「専門家」の中では極めて論理的で、あくまでも医学者の立場で、データや論文で分かった範囲の見解を述べ、分からないことは、分からないとはっきり言う。番組の司会者の誘導にのって、感染増大を煽るようなことは、まず、ない方なんですね。 そういいう意味では信頼できる方ですが、スポーツ紙の記者の手に掛かると、「感染者数がヨーロッパ並みになる」と煽ったタイトルになり、タイトルしか見ない人達が、ワーッと怒りのコメントを書く。 こういうパターンが、いまや定番になっているんじゃないですかね。 政治家や有名人のちょっとした一言を、記者が、都合のいいように解釈して、それを記事にして流す。「完全な嘘」ではないけれど「その理解は曲解だろう」ぐらいなことは平気でやらかす。かつ、見出しは記事の内容とは違おうが気にせず、より大袈裟に、読者が「えっ」と気になるセンセーショナルなものにする。で、人々はタイトルをチラと見ただけで、脊髄反射的に「けしからん」「とんでもない」と反応し、四方八方に拡散させる。あっという間にそれが世間の空気になる・・という。 このデイリーの記者さんは、まだ悪意で書いているわけではない分、罪は軽いのかもしれないけれど、あまりに無責任だし、こんな安易な記事の発信で、ジャーナリストを名乗るなよとは思いますよね。記事にするなら、森内先生に直接取材して、話を聞いてからにするべきでしょうに。 ネットの発展で、記者さんに課せられるノルマの記事量が増えているのじゃないですかね。あるいは、アルバイトに書かせる記事が増えている・・。だからテレビを見ただけ、インスタグラムを見ただけの記事が横行することになっている。 芸能人の、さして美味しそうでもないお弁当公開やらそれがどうした的・日常生活公開のブログやインスタグラムを紹介するだけのしょうもない記事が最近やたら多いのも、そういうことなんでしょう。 これ確実に知的レベルの衰退ですよね。ほんと、世の中、大丈夫なのかぁ・・でありますよ。