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会議がやっと終わって、今から鍋! のミツル。ですこんばんは 何とかSS書き終わったので更新して行きまーす もう季節は秋なのに、なんとなく夏っぽいお話になってしまいました そして、ミツル。は炭酸飲めません なので、このスカッと爽快感がわからないのですが まあこんな感じかなと(笑) 明日はイベントなので日記に更新ありませぬ また明後日元気にお会いいたしましょう~ ***天然サイダー*** 毎日毎日なんで同じように腹が減って、 眠くなって、 朝はやってくるんだろう。 俺はコンビニ弁当の空箱をゴミ袋に投げ捨てながら、 腐った。 机の上にキレイに並べた眠気解消のドリンクのビンを1つ手にとって眺める 清涼飲料水 どうせ電気代は全てあいつら持ちだ。 使えるだけ使ってやれと、 夜通しあらゆる電化製品を消費している俺は、 ビンの裏側に書かれたその文字を見た途端、 萎えた。 ビンを全部なぎ倒してやろうかと思ったが、 残念なことにダメージを受けるのは自分だ。 後始末を自分でするほど間抜けなことはない。 「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」 と叫ぶのもあほらしくなって、 俺は床に転がった鞄を掴むと鍵をかけずに部屋を出た。 ―――見てェ…… 何かが無性に見たかった。 だけどそれが何なのか、 ぼんやりと宙を漂っていて実態が掴めない。 雰囲気だけがまとわりついてくる。 正体を明かしたくて、 焦点を絞ろうとすればするほど遠ざかっていくそれ。 わからないけど、 鞄を見たとき何かが結びつきそうな気がして、 俺はそれを咄嗟に掴んでいた。 既に右上45度の位置まで登った太陽は、 やっと開けているような俺の目に容赦なく光を注いでくる。 遠くの道路がゆらゆらと揺れるのを眺めていると、 砂漠の中を歩いているような錯覚に陥った。 見渡す限り黄金色の砂に取られる足を、 一歩一歩前に出すことだけを考える。 身体が重たい。 喉が、 渇いた…… 逃げ水を追って必死に身体を動かす。 何か飲みてェ。 何か見てェ。 頭の中はそれだけで埋まっている気がした。 それ以外のところはさらにモヤモヤしていて良くわからない。 ―――あちィ…気持ちわりィ…… 視界もぼんやりで、 ここがどこなのか、 自分はどこに向かっているのかもわからなかったが、 いますぐここで眠ってしまいたかった。 ―――ちょっとだけ…だから…… なぜか自分にそう言い訳して、 何かに凭れかかった。 「あいつがこうなったのも、 お前が家にいないからだ」 壁の向こう側から聞こえるような篭った声が聞こえてくる。 「ちょっと、 あなたどこへ行くんですか。 男のあなたが、 仕事仕事であの子にかまってやらないからこうなったんでしょう」 別に俺はお前らのせいでこうなったんじゃない……いや、 お前らのせい、 なのかな…… 「なーなー、 知ってたか? 丸メのやつ体育の熊とデキテたんだってよ!」 今度は目の前で、 声が弾けた。 「……お前うるさいよ。 毎度毎度。 それをどこで知った」 夢の中の俺が答える。 「え、 校長室の前通りかかったら聞こえた」 「バカか、 お前、 それトップシークレットだろう……」 「オレ。 丸メのやつ、 応援してあげてェな~」 ヘタに人に言うなと口止めする俺の言葉を丸っと無視してくれる。 「お前に応援されてもなぁ。 むしろそれぞれの事情があるんだから放っておいてやれよ」 「むー、 応援されて嬉しくない人なんて、 いないやい」 ムキになるヤツの声が、 なぜか懐かしかった。 唇に何かが触れた。 と同時に喉に液体が流し込まれる。 「フレーッフレーッ」 遠慮がちに小さく囁かれるのを聞いた気がした。 「ッゲホッ」 喉から鼻に空気の粒が流れ込んで、 溺れそうになった。 「炭酸とかありえねーだろー!」 「あ、 起きた」 叫びながら目を開けると、 そこには心配そうなヤツの顔があった。 少しだけはっきりとしてきた頭で周りを見渡す。 そこは自宅からほんの少し行ったところの公園だった。 普段からあまり誰も利用しない避難地確保用の公園だったが、 ちょうど昼時にも重なって、 人っ子一人いなかった。 「びっくりしたんだからな! 3日も学校来ないから、 心配で様子見に来たら、 お前道路に寝てるんだもん!」 「普通、 そういう状況だったら、 救急車とか呼ばねェか」 この天然が! という俺の言葉に、 ヤツはぐっとか変な声を出して下を向いた。 「や…だって…なんか、 目の下のクマとかすごいし…熱なさそうなのに、 すごい汗かいてるし……だから、 なんか……」 変なクスリとかやってんのかなって思って。 と、 ヤツはようやく聞き取れるほどの小さな声で言った。 「あほか! やっとらんわ!」 やってないと聞いてホッと息を吐いたヤツの手の中で、 サイダーと書かれた缶の中身がピチッと跳ねた。 「それに、 普通そういう時にやるのは水じゃねぇか? サイダーってお前……」 「だって、 お前が寝言で言ったんだもん。 タンサンって」 「タンサン……?」 炭酸の夢なんか見たかなと思い返して、 自分の思いつきに思わず吹いた。 「ぶっくくく、 タンサン……」 おそらく父さんとつぶやいたんだ。 思い出したしかめっ面した父さんの顔が、 天然水サイダーの缶にすり替えられて、 俺はおかしくて笑った。 「炭酸なんて寝言で言うかよ」 「や、 飲みたいのかなと思って…」 つられてヤツも笑った。 「あ」 その笑顔を見て、 何かがカチッと嵌った気がした。 大をした後で、 勢い良く流して、 流してやったぜみたいな感じだ。 「え、 何?」 俺がヤツの顔を見て、 「あ」の形に口を開けたまま、 黙ったから、 ヤツは何? 何?と自分の顔を触ったり身体を確かめたりしている。 「お前、 悩みなさそうでいいな」 俺は自然と出てしまった自分の言葉を少し後悔した。 悩みがない人間なんていないのに。 八つ当たりだ。 「どっか、 行っちゃいてェなァ」 ごまかすようにそう言って再びベンチに寝そべると、 ヤツは俺の頭の上に少しだけ開いたスペースに、 俺に背を向けるようにして座った。 「お、 オレだって、 悩みくらいはあるんだ」 見上げると、 やつの丸まった背中だけが見えた。 「お、 オレ……」 両手の指を交互に組んで、 空にかかげてみる。 「なんだよ」 それっきり何も言おうとしないヤツの背中にそれをぶつける。 「オレ、 お前のこと……好きなんだ……」 俺は見えないことをいいことに、 ちょっとニヤけてみた。 「お前さ、 ちょっとニッってしてみ」 「オレ! 今! すごい、 すごいこと言ったんだぞ! 何その返し」 立ち上がって俺のことを睨みつける。 「いいからさ、 ニッてしてみて」 俺がニッとしてみせると、 ヤツはしょうがなく引きつったみたいに口の端を上げた。 「なんか、 もっとこう、 ニコって」 ヤツは「ニコ?」みたいな笑顔を見せる。 「や、 違う。 ちゃんとできたらキスしてやるから」 「ホントか?!」 そう! その笑顔。 俺が這ってでも見たかったものは、 こいつの天然の笑顔だった。 見てるとサイダーを飲んだ後みたいに、 喉の辺りがスカッとした。 「そっか、 これに飢えてたのか」 俺は立ち上がってヤツを引き寄せると、 耳元に唇を寄せた。 「やっぱお前、 悩みないじゃん」 そう言って顔を上げて、 約束どおり真っ赤になっているヤツの唇にキスをした。 部屋の鍵をかけ忘れたと言うと、 かけに帰れと言う彼の手を引いて公園を出た。 片付けもしなくちゃいけないと言ったら、 応援だけしてやると言われた。 だからひと口ちょうだいと言って奪った缶の中身を、 全部飲み干してやった。 俺のクソ暗くてクソ根強い悩みは無くなったわけじゃない。 けれど、 ひとまずこいつの天然ボケとこの笑顔が、 サイダーみたいに一瞬だけでも俺をすっきりさせてくれる。 俺は空になった缶を名残惜しそうに覗く天然ボケを振り返りながら、 部屋に誰もいないことを初めてちょっとだけ感謝した。 ■おしまい■ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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