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KAY←O -ノックアウト-

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「裸エプロンって、やっぱ男のロマンなの?」
「ぶっ!」
 休憩室の無料自販機の前で、同期の女の子に聞かれ、俺はむせた。手で口をふさいで、コーヒーが出そうになるのを何とか止める。
「ゲホッ、ゲホッ」
 落ち着いてから、大丈夫? って、俺の背中をさすって笑う彼女をちょっと睨んでみたが、背後でクスクス笑いが起きて、知ってるのは彼女だけではないことを知らされる。
「どこまで言いふらしてるんだよ……」
 呟いてケチョンと頭を垂れた。
「先輩からなんて聞いたか知らないけど、友人の冗談だから」
 ははははー、と空笑いして、カップの中のコーヒーを飲み干すと、カップ専用ゴミ箱にそれを放り込んだ。
「またまたー、帰ったら可愛い彼女が待ってるんでしょう~」
 そう言って俺の携帯を指差す。
 ホント、OLさんたちには時々ビックリさせられる。会社で言いふらしたことはないのに、どこで見られていたんだろうか。キーロックの必然性を身に染みて感じた。この人たちに携帯拾われる≒俺の人生破滅だ。
「彼女平日は来ないから。それに、女の子に、お弁当。って、駅弁渡されたら興醒めでしょ」
 俺は他の人にも聞こえるようにそう言い捨てて、偏見だと一斉にブーイングに変わった休憩室を逃げ出した。
 俺だって本気でそう思ってるわけじゃないけどさ、ちょっとした腹癒せ。

 俺の携帯の待ち受けには、未だに彼女の写真が貼られている。

「あ、言うの忘れてたけど、私、あいつと別れたから」
 そう彼女が言い出したのは、卒論が無事終わり、久しぶりに4人で集まった時だった。 俺たちだけでなく、なぜかアニキまで固まっていた。初耳だったらしい。
「さすがにクリスマスを独りで過ごしちゃうとね……」
 俺たちのその様子を見て、彼女が苦笑した。
「独りって、だってお前、クリスマスは一緒に過ごせるって……」
 アニキが、タバコを探してるのか、ポケットに手を入れたり叩いたりしながらキョロキョロし始めた。
「ドタキャンされたの。ま、最初からそうするつもりだったんじゃないかな。電話の向こうで、声を潜ませながら必死に言い訳する彼の姿を想像したら、怒りとか寂しさより、なんかどーーーでも良くなっちゃって、ピカピカ光るイルミネーションの下で私何やってるんだろうって思ったの。だからそのままバイバイって言って切っちゃった」
 カラッと言い放つ彼女に反して、アニキは明らかに動揺していた。結局ポケットからは何も出さず、今度はビール缶を口に運んでは空っぽなことに気づいて戻す。と言うことを何度も繰り返している。
 そりゃそうだろう、クリスマスは1ヶ月も前のことだ。彼女は独りで傷ついて、そして独りで立ち直った……ように見せてる。その間俺たちも、アニキも、彼女を励ますことすらできなかった。
「あたしさ、お兄ちゃんに頼ったらまた同じこと繰り返すと思ったの。いつでもお兄ちゃんに慰めてもらえるってわかってるから、やめられないんだって、自分で気がついたの。だから黙ってた。ごめんね」
「そうか……」
 そう呟いて、やっと新しい缶を開けたアニキは、そうか。ともう一度呟いて、ビールを煽った。
 テーブルの上の豪勢な料理が、急に冷えた気がした。
「料理、あっため直してこよっか」
「そ、そうだよな。きっとよかったんだよ、それで、な」
 気まずい流れを断ち切ろうと言ったセリフが、同じことを思って言った彼女のセリフと微妙に合ってなくて失敗した。俺はごまかすために、わざと明るい声を出して、カンパーイと1人ずつ順番に缶をぶつけて、残っていたチューハイを一気に飲み干した。
「すべった上に空回りしてる人がいます」
「しょっぺー」
 人の努力を踏みにじってはいけない。俺はテーブルの下でアニキとヤツの足を順番に蹴ってやった。
「今日は、卒業できそうで良かったね祝い。なんだから、沈んでないでパッといこう」
 彼女が両手に缶を持って高く掲げてみせる。
「お前が沈ませたんじゃねぇか」
「てへ」
 いつもどおりの光景だった。……うわべだけ。

 その日は早めに解散になって、アニキと彼女が帰った後、ヤツは片づけをしながら終始無言だった。皿洗いとかは大体彼女がやっていってくれたから、いつもの場所にモノをしまうだけで終わった。
「酔った?」
 ベッドの横に布団を敷くと、ヤツは自分のベッドじゃなくて俺の布団にもぐりこんできた。
「気持ち悪い」
 2人きりになって一言目がそれかよ。
 水持ってこようか? って聞いたけど、ヤツは小さく首を振って、俺の腹の辺りに抱きついてきた。
「あいつ、大丈夫かな」
 腹に口をつけて言うから、くすぐったくて笑ってしまった。
「さあ……気になるならメールしてみれば?」
 ヤツの髪の毛を掬ったりしながら頭を撫でる。
「……お前、してみれば」
 小さく呟いたその言葉に、俺は、お前らがつき合ったらいろいろ丸く収まるなぁと思って。と言ったヤツの言葉を思い出していた。今なら、ちょっとだけ、その時のこいつがなんでそんなこと言ったのか、わかるような気がした。
「おれぁ別に気になんねぇし。今頃アニキがなんとかしてんだろ」
 次は良い彼氏が見つかるといいねぇ、俺以外の。と言うと、ヤツは額をグリグリッと俺の腹に押し付けた。それから器用に口で俺のパンツをちょっとずらすと、納まっていたものを出してパクッと口に咥えた。
「ちょ、酔ってるから立たないって」
 そう思ったのに、チュパチュパ音を立てられて、手を伸ばして乳首を捏ね繰り回されたらあっさり立った。
「んっ」
 吸われて、舌で先を舐められて、身体が勝手に気持ちよさを求めて動いてしまう。思わず腰を押し付けた時、
「吐く」
「えー」
 ヤツはダッシュでトイレに行って、俺は半分立ったものを丸出しにしたまま取り残された。
 タオルで顔を拭きながら3分で戻ってきたヤツは、ちょっとだけスッキリした顔をしていた。
「喉ちんこにちんこ当たった」
「でかちんを褒めていただき、放置された甲斐があったってもんです」
 ヤツは笑いながら、パンツ穿いて、うつ伏せで暴れ馬を落ち着かせている俺の太もも辺りに、よいしょ。と言って座った。
「やっと寝かせたんだから起こすなよ」
 俺が言うと、脱がそうとパンツに手を掛けていたヤツは、パチンとウェストのゴムを鳴らして戻すと、背中に抱きついてカメのように俺の上に乗っかった。
「重いです」
「うん」
「重い!」
「……なあ、入れたくない?」
 俺が訴えても一向に退かないどころか、ヤツは俺の首元に顔をつけたまま、そう囁いた。
「……は?」
 俺は一瞬何を言われているかわからなくて、首だけひねってヤツの顔を見た。
 ヤツは俺の反応を見て一瞬笑うと、俺の手を引っぱって立たせ、一緒に風呂場に連れて行った。
 何が起きているかわからず、俺の頭の中はぐるんぐるんしていた。
 ―――入れる……って、何を? 何に……?
 脱衣所でノロノロしている俺を、ヤツは強引に洗い場に引っ張り込むと、シャワーの下で、キスしてきた。
 吐いた直後だとかは気にしなかった。嘘、気にする余裕がなかった。
 ちょっと見上げる俺は、シャワーのお湯が口に入ってきて溺れそうになったけど、なんかもう、必死で……。そのうちヤツが俺の手を取って、自分の後ろに回した。指先が入口に触れた瞬間、ちょっと躊躇しちゃったけど、ヤツが切なそうに指入れてって言うから、ちょっとだけ入れてグリグリした。
「ぅん……」
 ヤツが俺の肩に顔押し付けて気持ち良さそうに声を出すから、寝付いていたはずの俺の息子が起きてきた。ソープごっこ用に置いてあったローションを手に垂らされて、誘導された場所を突くと、ヤツが抱きついてきて、耳元で、ああ、ああって死にそうな声出した。
 エッチのときは、いつもどこかヤツの方が主導権を握っていて、どっちかっていうと俺がされてる感じがしてた。ヤツは俺の気持ちいいところとか、気持ちいいこととか知り尽くしてて、わざと焦らしたりするのもオテノモノ。俺だってもちろんヤツのを咥えたりしごいたりするんだけど、なんかこう誘導されてるって言うか、褒められて伸ばされてる感が否めない。……完全にしつけられている。
 なのにこの日のヤツは、いつもと全然違って俺にメロメロって感じだったから、思わずもう入れたいって言っちゃった。
 ヤツはごそごそ自分でなんかして、それから俺のにゴムを着けると、湯船の淵に手をついて、俺が入れやすいように膝を曲げて高さを調整してくれた。
 俺の息子ちゃんは、ヤツの中に納まっても萎えることなくちゃんと立ってたから、感極まって、俺はちょっとだけ泣いた。
 足元に垂れたローションで何度も滑りそうになったけど、夢中で腰を動かした。ヤツが壁にかけたシャワーノズルに掴まって、必死な感じで喘ぐから、柄にもなく愛しいとか思ってしまった。

 これが正真正銘俺の初挿入、ヤツにも可愛らしいところがあることを発見した720日前後。

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最終更新日  2008年11月24日 17時13分04秒
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