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テーマ:たわごと(26903)
カテゴリ:オリジナル
 その樹は大地に根を張り、その土地を守るのが仕事でした。 でも降る雨もなく流れてくる水もなく、長い年月を経てすっかり乾いてしまっていました。 呼吸はできても味気なく、隣の小さな樹に手を伸ばすことすら億劫になっていました。
 その通り雨はいろんなものに降り注ぎながら、世界を旅して回るのが仕事でした。 時には喜ばれ、時には嫌われ、その一瞬の記憶だけを残して去っていかなくてはなりません。 直ぐに忘れられてしまうことがほとんどで、寂しくなることもありました。
 ある日、その樹の上に通り雨がやってきました。 すっかり潤いをなくしてしまったその樹に、通り雨は勢いよく降り注ぎます。 久しぶりの感覚に、その樹は両手を広げて喜びました。 こんなに喜んでもらえたのは初めてです。 通り雨はちょっと嬉しくなって、次の日もその樹の上に降り注ぎました。 その樹は降り注ぐたびに喜んで、次の日も次の日も両手を広げて雨を包み込みました。
 そのうちその樹は隣の小さな樹のことを忘れて、降り注ぐ雨を待つようになりました。 通り雨も自分の立場を忘れて、いつのまにか3年もそこに留まってしまいました。 降って降って降り続けたら、その樹に溶けてしまえるのではないかと本気で思ったのです。
 だけどその雨によってすっかり潤って活力の戻ったその樹は、隣の小さな樹の存在を思い出しました。 億劫になっていたその手を伸ばし、小さな樹に水を分け与えました。 小さな樹は、分けてもらったその水がその雨の水だとは知りません。
 雨は悲しくなりました。 どんなに降り注いだとしても、雨が樹にはなれないのです。 泣いて泣いて泣き続け、その雨はとうとう大切なその樹を溺れさせてしまいました。 自分のせいで苦しんでいるのに、雨にはどうすることも出来ません。 雨は降り注ぐことしかできないのです。 目の前でその樹が救いを求めて小さな樹に寄り添うのを、悲しい気持ちで見つめていました。

 やがて水がひき、息が出来るようになったその樹が空を見上げると、そこに雨はもういませんでした。
 それからまた長い年月が経ち、その樹は小さな樹と結ばれました。 通り雨がどこかに現れたと言う話を、二度と聞くことはありませんでした。

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なんとなく夜中にふと思いつき…
ムトベ電機番外編あともうちょっとだー





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最終更新日  2009年10月16日 12時16分45秒
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