|
カテゴリ:うた・唄・歌
となり町の福祉施設のフリースペースで、月に1回開かれる「歌の会」に毎月出向いている。 ボランティアと言う立場でギター伴奏をするのがわたしの仕事だ。 メンバーは20代から60代まで多岐に及ぶ。 その日立ち寄った人たちが自由に参加できる。 参加するもしないも各自の自由だ。 その日によって人数はまちまちだが(天候に左右されたりする)だいたい5人~10人くらいの人が集まる。 各自が唄いたい歌を出し合って、原則としてみんなで唄う。 歌のリクエストは、季節の歌や、各メンバーの思い入れのある歌になる。 みんなで唄うことに適さない歌や、メンバーの特別な希望のある場合は、ソロの披露となる。 わたしはずっとギター伴奏なのだが、毎回1曲だけはソロを唄わせてもらう。 約1時間のセッションが終わると、一人ひとり感想を言い、次回の歌のリクエストをする。 わたしが知らない歌があがった場合には、1ヶ月かけて予習をすることになる。 わたしにとってその会は楽しみでもあり、新しい歌を覚えるのに良い機会となっている。 徐々に、歌のレパートリーが増えていくのだ。 ◇ ◇ ◇ さて、先月=3月の例会でのこと、ちょっとしたアクシデントがあった。 ギター伴奏中に、こともあろうか、わたしの指が攣ってしまったのだ。 もう30年数年ギターを触っているが、初めての経験だった。 その日は、雨上がりのうす曇り。 春の寒の戻りで、肌寒い午後だった。 前半が終わり、屋外で一服し少し身体を冷やした後の事だった。 後半1曲目は、『おぼろ月夜』でスタートした。 ♪~ なのは~なばたけ~に い~り~ひうすれ~~ ~♪ 聞き覚えのある唱歌だったので、予習などしていなかった。 初見でコードを爪弾いて、みんなで歌って行ったのだったが、何かがおかしい。 どうもリズムがおかしい、小節の中間など、変なタイミングでコードが変わるのだ。 「何か変だな」と感じながら、少し後味が悪い感じでその曲は終わった。 さて、次の曲は『知床旅情』、思い入れのあるメンバーがソロで歌いたいと言う。 「これはお手の物」と前奏を弾き始めたのだが、ちょうどGからDのコードに移行しようとした時のこと。 Gのコードで伸ばしていた左手の人差し指を、Dのコードに移ろうと曲げようとした所、曲がらないのである! なんと、最も簡単なコードの1つであるDのコードがうまく押さえられない! 思わず「えー!?」とつぶやきながら、うろたえていた。 「おかしい、おかしい、指がおかしいや。」と。 わたしは自分の身体に起こった異変にびっくりしながらも、ある所でその新鮮な初めての体験に喜んでいるような所もありつつ、ウロウロしていた。 そして、ギターを置いて何気なく席を立ち、ソファーのある一角まで歩いて行く。 みんなを前にして「何だろうね?これ!」と、自分の左手を持ち上げてそれを眺める。 人差し指は伸びたままで、他の指は少し曲げている。 人差し指を曲げようとするのだが、ピクリとも動かない。 一瞬自分の目を疑うが、まるでマネキンの指のように伸びたまま。 壊れたロボットのような自分に驚く。 「えー!?何?これ、脳がやられたのかなぁ?・・・」とつぶやく。 左手の人差し指に痛みは全くないのだが、とにかく動かない、制御できないのだ。 「おかしいねぇ」と苦笑いしているわたし。 わたしの異変に気づいたみんなは「今日はもうやめようか」とか「後はアカペラでやろうか」とか気遣ってくれてとても優しい。 それで少し冷静になり、右手で左手を擦ったり合掌したりしてみると、少しは感触があるようだ。 少し安心して、右手で左手の五指を曲げたり伸ばしたりのストレッチをしてみると幾分良くなった。 左手の人差し指も、徐々に感覚が戻り、いくらか動かせるようになった。 ちょっと一安心である。 席に戻り、ギターを抱いて少しいじってみる。 左手の人差し指はまだ少し痺(しび)れていたが、何とかなりそうだ。 でも、場が中断されて、みんなも何か不安そうである。 以上、2~3分の中断を挟んで、さあどうしようか・・・。 ちょっと考えて、手元の楽譜を見ながら、打開策が浮かんだ。 「わかった! じゃあ、ここでちょっと自分の歌を唄わせてもらうよ、そうすれば大丈夫になる」とみんなに言った。 で、唄うことにしたのが『のんびり行こう』と言う自作の歌である。 歌詞の内容もピッタリだし、この歌を唄えば平常の自分に戻ることが出来ると直感したのだった。 わたしは、何か懐かしく暖かいものに戻るかように、この歌を求めた。 ♪~ のんびり行こう あわてることはない 大事な何か なくせばいいだけ 大事なものが 多すぎて困るよ 本当に大事なものは なあに ~♪ わたしは、ゆっくりと噛みしめるように唄い出した。 ♪~ 大事なことは 自分でいることさ 見知らぬ友だち たずねて来た ~♪ 大事なポイントは、6年前に作ったこの歌の歌詞にすべて言い現されている。 そう、わたしはちょっと自分の歌を忘れてしまっていたようなのだ。 誰かの歌を唄う事、伴奏する事は、その作者のリズムや調子に気持ちを合わせるという事だ。 それがあんまり高じて来ると、自分のリズムや調子を崩してしまう事になりかねない。 なんだか、そんな体験をしたと思っている。 自分の歌を唄うことによって何とか自分を取り戻したわたしは、その後『知床旅情』に続き、以下5曲ほどの伴奏の役目を無事果たす事が出来た。 相変わらず、左手の人差し指にはあまり力が入らなかったが、何とかなった。 お陰さまで「歌の会」はいつものように、楽しく終了した。 ◇ ◇ ◇ ブログ仲間の ぴあの@サファイアさん が丁度タイミング良く、『おぼろ月夜』の秘密について興味深い日記をUPしてくれた。 それに触発されるように、この日記も記事にする事になった。 後から振り返ってみると、わたしはこの曲を何気なく4/4拍子で演奏していたらしい。 楽譜を良く見ると、これは3/4拍子の歌だった。 演奏して唄った後に、なんとなく違和感を感じたのはそのせいだったようだ。 あの違和感は気のせいではなかった。 そこでリズムが狂ってしまったのかも知れない。 まぁ、でも、ぴあのさんの調べによると、『おぼろ月夜』と言う曲自体がちょっと曲者なのだとのこと。 自然な日本語の抑揚がうまく乗らないような曲なのらしい。 わたしはちゃんとアウフタクトをつけた4/4拍子で次のように唄っていたようだ。 ♪~ なの/は~なばたけ~ /に い~り~~ひ/うすれ~~ みわ/た~すやま の~/は か~す~~み/ふかし~~ はる/か~ぜそよふ~ /く そ~ら~ ~を/みれば~~ ゆう/づ~きかかり~ /て に~ほ~~い/あわし~~ ~♪ 本来の、アウフタクト付きの3/4拍子では以下のようになる。 ♪~ なの/ は~なばた / け~に い / り~ひうす / れ~ みわ / た~すやま / の~は か~/ す~みふか / し~ はる / か~ぜそよ / ふ~く そ~ / ら~をみれ / ば~ ゆう/ づ~きかか / り~て に / ほ~いあわ / し~~ ~♪ どちらにしても、言葉とメロディーがうまくかみ合っていないように思うが、それがこの曲の特色なのかも知れない。 長く愛唱されてきた歌には、何がしか魅力があるのだと思う。 ◇ ◇ ◇ 「自分の歌を唄い続けていく事」が大切だと前回の日記に書きましたが、さて、自分の歌とは何でしょう。 それは自分で作った歌でなくても構わなくて、自分が親しんで思い入れのある歌なら何でもいいのだと思います。 そして「自分の歌を忘れてしまったらこんな事になる? 」というようなお話をしました。 まっ、それも、わたしの思い込みに過ぎなかったのかも知れませんが。 あなたの自分の歌は何でしょうか? 今夜は、昨日の三日月の写真でお別れしたいと思います。 それでは、また。 ~ 突然お月様に会った夜 ~ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[うた・唄・歌] カテゴリの最新記事
|