入りやすくて、入ったら寛げる。
コトバでは簡単なんだけど難しいよね。

近所に角地の喫茶店がある。
２面がガラス張り。
１０坪弱なので、全部見える。
見えないのはトイレの中くらい。
客席もケーキカウンターに居る店員も丸見え。
一見入り安いように思う。
でも、中が丸見えというコトは、店内に入った自分も丸見え。
座ると通行人の視線が気になる。
友人と歓談するのなら気にならないかもしれないが
独りで楽しむには勇気がいるかもしれない。
自意識過剰な方向け？
まぁそんな点もあるが、外から丸見えの店は
店主が一番大変なんだな。
ヘタすると通行人を睨んでしまう。
睨んでいる姿を他の通行人に見られてしまい
「あそこの店主はいつも睨んでいる」とか言われてしまう。
そんなことを店主も御存知なようで
いつも窓に背を向けている。
見られるというのは嫌なもので
同業や近隣から常に見られていることを意識するので
日差しを避ける為か、いつもブラインドが降ろされている。
これでは何の為にガラス張りにしたのか解からない。

外から見え難いというのも問題だよ。
ウチなんか、あからさまに覗かれる。
で、ウチは外から客席が見え難いので
覗いた人は、「どうなってんの？」という顔をして通りすぎる。

理想とする「入りやすくて、寛げる店」を文章にすると
以下の感じになるかもしれない。

通りを歩いていると、良さそうな感じの珈琲屋がある。
「へ～」と店内を見ると
珈琲豆が並んだ棚とカウンター越しに珈琲を淹れている姿が見える。
店内の人とは視線が合わないので
気にせずに店頭のメニューが読める。
店のコダワリも押し付けがましく無いので
ドアを開けて入る事にした。
カラン、カランとドアベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」という声がして、そちらを向くと笑顔の店主。
そして一瞬してから珈琲の香りに包まれている事に気が付く。
窓越しの席に案内されたので席に着く。
すると、外から見ていた店内とは違うのに気が付く。
外から見られることが無い。
そして、自分の視線のやり場に困ることが無い。
隣の客の視線も気にならないし会話もうるさくない。
椅子に座りなおし、カバンから読みかけの小説を取り出し
珈琲が来るまでストーリーに没頭する。
「お待たせしました」という声と共に
テーブルに珈琲カップが置かれる。
湯気と共に香りが体の芯に届くようだ。
カップを持ち上げ、香りを楽しみながら啜る。
すると、今まで気にならなかったが
店内には微かに音楽が流れていることに気が付いた。
ジャズなのかな。

みたいなのが、寛げる店？
でもさ、マニアにしか解からないよな。
マニアが好む店なのか？

よく喫茶店やレストランでお客さんの視線のとこだけ
ガラスが曇りガラスになっていたりするよね。
あれも、外から見られる視線を防ぐ為だよ。

あとコダワリだよね。
外から見て敬遠されるコダワリ。
禁煙・携帯・動物などなど。
全部ウチでは禁止。
これって、当たり前なんだけど
それをマークやコトバにされて店頭にならぶと
なんだか口うるさいオヤジが出てきそうなので
止めて他の店に行こうか？となる動機付け。
禁煙はともかく
携帯なんてさ、小さな店でデカイ声で話されてみなよ
「うるせ～な～」と思うでしょ。
ペットだって、禁止って書かなかったら
アライグマも連れてこられるかも知れない。

いろんな禁止事項ってさ
店主が「うるさい！」と思って禁止にするのではなくて
ウチの店を楽しんでいるお客さんがいるのに
その雰囲気をぶち壊しにされる事で
その楽しんでいるお客さんに対して申し訳ないと思う気持ちが
いろいろと禁止にさせるんだよね。