許された 選択 - 地球近傍天体 NEO -
地球に接近する軌道を持つ天体を、地球近傍天体(NEO)と呼びます。【小惑星1989FC】直径500m、速度6万キロ。地球に衝突すれば、地上で直径10kmのクレータ、海中なら高さ100mの津波が発生したはずの天体。1989年3月23日、小惑星1989FCは、地球からわずか75万キロの地点を通過しました。月と地球の距離のわずか2倍。交差時間が数時間ずれれば、地球に衝突していました。怖いのは、小惑星通過後3週間も経ってから、人類はそのニアミスに気がついたこと。あと数時間のずれで、人類は突然の滅亡の危機に瀕するところでした。接近は太陽の方向からであったため、見落とされました。【小惑星1996JA1】1996年5月16日、月とほぼ等距離の45万キロの地点を通過しました。また1994年12月の、小惑星1994XM1は直径16mですが、わずか10万キロのニアミス。交差時間で、1時間ずれれば衝突でした。【小惑星1997XF11】直径2キロ。2028年10月26日の接近は、わずかに4,600キロと予想されました。これは静止衛星の高度の、超至近距離。しかし1997XF11の2028年の接近距離は、その後に96万キロに修正されました。これでも交差時間10時間以下のニアミスですが、衝突は回避されます。ただし、1997XF11は、2033年、2035年、2045年にも接近します。しかも、再接近距離は、静止衛星距離の1/2の1万5千キロ。衝突の恐れがあります。【小惑星アポフィス】直径400mにも要注意。2029年の通過距離は、3万2千キロ。2036年の予想は「衝突」。ただし、今年になって、予想衝突確率は13万5000分の1に下げられました。【小惑星イカロス】1968年に地球から600万キロの地点を通過した、小惑星イカロス。直径1.4キロの、この大きな天体は、19年に一度、地球に接近します。次の地球接近は、2015年6月。現在、NEOは4,000個以上。直径1キロ以上でも、1,000~1,200個あるとみられます。【地球に接近した小惑星】---------------------------------------------名前 日付 接近距離(万km) 直径(km) 1989FC 1989-03-23 75 0.11991BA 1991-01-18 17 0.0051991TU 1991-10-08 73 0.0051991VG 1991-12-05 46 0.0051993KA2 1993-05-20 15 0.011994ES1 1994-03-15 17 0.0131994WR12 1994-11-25 73 0.321994XM1 1994-12-09 10.5 0.0161996JA1 1996-05-16 45 0.32033年以降の1997XF11,2036年のアポフィスとの衝突を、はたして回避できるでしょうか。予想技術は、まだこれから。あなたは、どちらを選択しますか?小惑星衝突を知らされ、ただ祈る日々。予想外の突然の小惑星衝突に、何もわからず滅ぶその日。【参考】 フロリン・ディアク,科学は大災害を予測できるか,株式会社文藝春秋,2010年,213P