恐れるのは 鬼よりも - ヒイラギ -
ヒイラギがない節分に、鬼は笑う。ヒイラギは、とげのある葉を持ち、そのとげで鬼の眼を突く。さわると、ヒリヒリ痛む葉のとげは、その名の由来「疼ぐ(ひいらぐ)」になる。最近の節分の夜は、鬼が恐れるヒイラギはない。ヒイラギのない節分に、鬼は安堵し、高笑いするにちがいない。ただ、ヒイラギは、老いれば、とげが減り、葉は丸くなる。ヒイラギは、円熟する人のように、老いてゆく。丸い葉のヒイラギは、きっと鬼を払わない。老いればヒイラギも、鬼を受け入れることだろう。多くの人は、節分の、ヒイラギを忘れてしまった。さらには、豆をまくことすら忘れつつある。今、人は、鬼を払うより、鬼を招いているのかもしれない。鬼を招くのは、人が丸く老いたからではない。ヒイラギより、豆よりも、鬼が、人を恐れるからだろう。