ことば研究会
わりと誰かれかまわず長い間、「これ」についてしゃべってきて、ようやくひとり「これ」の伝わった人がいて、その人が、知ってる人(知り合いの知り合いでもいい)の中でもうひとり、ふやそう、と言う。 そりゃまあ、何人でも伝わるならうれしいけど、ぼくはもう、身の回りの人に伝えるのは、ほとんどあきらめている。 だいいち、しゃべった相手に、ほとんどいかがわしい宗教の勧誘みたいに受け取られてもきた。(まあ、反対の立場だったら、「息を止めて何かを見つめて数秒間考えない、といった忍耐強い実験によって、あるときふいに「これ」がひろがります」とかなんとか、熱い口調でしゃべってるひとが近くにいたら、この人とはあまり関わらない方がよさそうだな、といった常識が働きますよね) それに、ぼくがいようがいまいが、「これ」は人類が存在している間は、これまでも、これからも、誰かから誰かに伝わっていくのだ。 だけどな、よくよく考えてみるに、「これ」を伝えるのは、ぼくにとっても「生きていてしたいこと」の代表みたいなもんだからな。しかも可能性はじゅうぶんあると思っているらしい理解者があらわれたからには、こいつはひとつ、むだに終わってもいいから、やることになるんだろうな。