おはなし49
「点と線」というのは、おもしろいけど文章はすんなり読めてしまう推理小説だろうと思いこんでいたのだけれど…ところがはじめのページでいきなりぼくは混乱する…『この会社はここ数年に伸びてきた。官庁方面の納入が多く、それで伸びてきたといわれている。だから、こういう身分の客を、たびたび「小雪」に招待した。』(点と線:松本清張)より引用「いわれている」って、世間からいわれているということなのか?「だから」?「伸びてきたといわれている。だから」では、因果関係が妙ではないか? 官庁方面のおかげで伸びてきたと(世間で)いわれているから、「だから」接待する? 仕事をもらうために接待するのではなく、仕事をもらったお礼に接待するということか…『安田は、よくこの店を使う。この界隈では一流とはいえないが、それだけ肩が張らなくて落ちつくという。しかし座敷に出る女中は、さすがに粒が揃っていた。』(同上)「という」?「落ちつくという」って、だれが「いう」? 安田がいう? それとも、この店を使う客たちがいう? それとも「落ちつくという」状態のことなのか… ぼくの読み方だと、文章がそうとう妙な具合にできている。どうやら「点と線」は興味深い文で作られた魅惑的な推理小説らしい。誰が置いて行ってくれたのかわからないけど、ありがたいことだ。「そろそろ2010年ですよ」「まさか飛行機で点と線を書き写しながら年を越えるとは」