おはなし193
遠山記念館から運び出された展示箱はトラックの荷台に積まれ、粗大ゴミ捨て場に向かう。「ひょっとして、遠山先生はお亡くなりになったのかな」「私たちのおしゃべりもそろそろ終わりですかね」 ゴミ捨て場に落とされ展示箱から飛び出した二人の体は、元の大きさに戻っている。『天地がひっくり返りそうです!』と僕。 天地がひっくり返り、気を失い、気づいたら月夜だった。「どうやら抜け出たらしい」「空に抜け道があったとは」「え? そうなの?」「あ、たいへんです。ひっくり返って頭を打ったせいか、目的を忘れてしまいました」「塔に行くのが目的じゃなかったのかね?」「そんな話、しましたっけ? そうなんです、だけど何のために塔に行くのか、すっかり忘れてしまったのです」