おはなし265
「どうして香港に行きたいの?」「私のうちがあるから」「え?」「鴨寮街(あぷりうがい)に『私のうち』があるから」「あなたのおうちの住所は?」「Room B, 2/F 198 Apliu st.」「え?」「鴨寮街一九八号唐三楼(B房)」「2/Fで三楼?」「日本の建物の感覚で言うと4階」「2/Fで三楼で4階?」■『さて、契約書に書かれた入居先は「鴨寮街(あぷりうがい)一九八号唐三楼(B房)」である。「この住所の正式な英語表記教えてくれます? これから電話の申請に行くんで」 香港では政府からの文書や電話の請求書など、コンピューター管理されたものは英語表記で郵送されるため、自分の名前と住所の英語表記を知っておく必要がある。私がわざわざ念を押したのは、香港の住所が混乱しているからだった。 香港の住所表記はまさに中・英が一緒くたで混乱を極めている。』(転がる香港に苔は生えない:星野博美(著):文春文庫:p142)より引用