おはなし443
海の前の椅子にすわっているとノートが風と落ちて来た。『残りの人生をどうしますか?』と書いてあるはず。ノートに書きこむ。 『仮に、残りの人生でやりたいことが「身心から言葉を抜く試み」であるとして、それは何をもくろんでいるのか? 身心が言葉から離れる試みによって起こりえる善きことが、たとえば「感覚の不可逆的な変化」とでもいうような「ほとんど起こりえない得体の知れない変化」だとしたら、たとえ望ましい変化だとしたって、そんなのは、なんとかして宝くじに当たりましょう、というようなもので、ほとんどばかげている。 ほとんどばかげているがゆえの魅力もあるのだろうが、それが善い変化だとしたって、ほとんど起こりえないことへ向かうよう人を誘っていいものだろうか? そもそも、誘われて起こる変化なのだろうか…』