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1979年8月15日。
終戦記念日の零時零分。 一人の男児が、この世に生を受けた。 一人の父と、一人の母。 そして、二人の姉の元に生を受けた。 待望の「長男」として。 はじめての記憶は、幼稚園に入園する前の事だった。 我が家に真新しいファンヒーターが訪れた。 それは、ある冬の昼下がりの出来事で。 父と母と一緒に、私は真新しいファンヒーターを、嬉しそうに眺めていた。 誰がそのスイッチを押したのかは、よく覚えていない。 ただ、その直後、ものすごい爆音と共に、白い噴煙がモクモクと立ち昇った事だけを鮮明に覚えている。 私は今か今かと、二番目の姉が小学校から帰宅するのを待った。 三つ離れた姉が、その衝撃を目の当たりにするのを楽しみにしていたのだ。 斯くして姉は帰ってきた。 私は私が味わった、ミラクルなトキメキを、はじけるような驚きを、姉にも味わって欲しくて、興奮しながら昼での出来事を話した。 姉もまた、身を乗り出してその話に聴き入った。 一頻り話し終えると、私はいよいよそのスイッチに手を伸ばした。 二人で、「その瞬間」を固唾を飲んで待った。 スイッチに手を伸ばす。 スイッチを押す。 しかし、爆音の代わりに、「チチチチ・・・ボッ」っと上品な音がして、静かにファンヒーターは、可動しはじめたのだった。 虚しい空気が流れる。 それから何度もスイッチを消したり押したりしたが、「チチチチ・・・ボッ」と、静かな空気が流れるだけで、ファンヒーターは二度と吼えてはくれなかった。 こうして、トキメキに満ちた私の最初の記憶は、しらけた空気と一緒に幕を下ろしたのであった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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