カテゴリ:第四章 4-364 ~ 420 話
そのころ こういちと椿は、福ノ島県、猫苗代湖付近の民宿で羽を伸ばしていた。 椿 勇姿 「いい湯 だったなぁ。。。 さっぱりとした。」 浴衣姿の椿、タオルを肩に担ぎ、和式の部屋に入ってきた。 既に先に風呂から戻っていたこういち、浴衣姿・・・ではなく、また普段着に着替えていた。 椿 勇姿 「なんだよ、浴衣着ないのか・・・?」 こういち 「うん、いつでも外に出れるようにしとかなきゃ。」 椿 勇姿 「おいおい、また何か出動要請でもありそうなのか?」 こういち 「別にそうじゃないけど、でも、いつでも備えておかなくちゃ。」 椿 勇姿 「硬いな、こういち君は。。。 おっ、夕食の準備も出来てるなぁ、美味しそうだ。」 こういち 「うん、頂きましょう。」 ~~ ~~ ~~ 椿 勇姿 「いや~、山菜といい、海鮮の刺身といい実に美味しかった。」 満足そうに座椅子の背もたれに寄りかかり、笑顔でお腹をさする椿。 こういち 「椿さんもたくさん食べるんだね。見て、ご飯の入ってたおひつ、見事に空っぽだよ・・・。」 椿 勇姿 「私よりこういち君の方が多く食べてるよ。 小さい身体なのに見事な食べっぷり。」 その時、外の道路を列を成して走る15人くらいの集団が通過していった。 『わっせ、わっせ、わっせ・・・・』 こういち 「へぇ~、見て椿さん。 拳法着ですよ、あれ。」 椿 勇姿 「柔道着よりも薄手に出来ているみたいだしな。 なにより・・・」 こういち 「胸に大少林寺のマークが入ってた♪ おいら達も行ってみましょう~☆ 」 椿 勇姿 「ぉぃ、行くって・・・・お~ぃ、待ってくれ~~!」 こういちは、既に部屋を飛び出していたのだった。 大少林寺拳法クラブの一団が向かっていたのは猫苗代湖畔。 夕方を過ぎると観光客の姿が消え、広い駐車場が寂しそうにひっそりとしてしまう。 その 駐車場に一団は走り込んでいった。 『わっせ、わっせ、わっせ・・・・』 綿来(わたのき)師範 「よぉ~し、止まれ。」 『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・』 綿来師範 「では、いつものように、柔軟体操から始めるぞ。」 『おすっ』 二人一組でお尻を付いて足を前に伸ばした一人を、もう一人が背中を押す姿があちらこちら で行っている。その姿を見ながら待つこういちの所に、ようやく到着する椿。 椿 勇姿 「速いよ、こういち君・・・ おっ、やってるな♪」 こういちは、駐車場の柵の上に腰掛け、足をブラ~ンとしながらその様子を見学していた。 この拳法クラブの団員は、中学生から高校生くらいの年齢層。 ひとり30代と見受けられる 師範という構成だ。 綿来師範 「ほぐれたら、蹲踞から型打ちを始める。 整列してくれ。」 『おすっ』 綿来師範 「い~か~? では始める! いちっ!」 『せやっ』 「にいっ!」 『せやっ』 「さんっ!」 『せや、せやっ』 椿 勇姿 「やはりいいものだ、身体を鍛えている姿は。。。」 と、椿は視線をこういちに向ける。 すると、こういちは、柵から降りて自分も一緒に型打ちをやっていた。 その姿は、普通の中学生くらいの少年が、見よう見真似で手足を動かしているように見える 不器用さ。 その横に立ち、椿も一緒に始めたのだった。 『せやっ』 「しちっ!」 『せやっ』 「はちっ!」 『せや、せやっ』 「きゅっ!」 『せや、せやっ』 「じゅっ!」 『せや、せやっ はいっ』 綿来師範 「よし、もう一度行くぞ・・・・ん・・・?」 従えている師範の目に、こういち達の姿が飛び込んだようだ。 そして・・・ 綿来師範 「お~い、そこのお二人さん、よかったら一緒にこっちでやらんか?」 こういち 「ほんとに~? うん、やる~~~♪」 椿 勇姿 「あ、ぃゃ、やるって・・・こ、こういち君・・・。」 その言葉を誘うかのように一緒に手足を動かして見せていたこういち。 そのまま誘いに笑顔 で乗っていったのだった。 綿来師範 「んと、キミ達の名前は・・・?」 こういち 「おいら、南、南こういち。 誘ってくれてありがとう。」 綿来師範 「うん、楽しそうに手足を動かしていたからね。 えぇっとそちらは・・・? 胴着を着ているようだが・・・。」 椿 勇姿 「はい、私は椿 勇姿と申します。 柔道の心得がありこの胴着を着ております。」 綿来師範 「柔道でしたか。 どうりで身のこなしがテキパキとされていた。 異種となりますが、少し一緒に汗をながしましょう。 なぁ~に、費用は要りません。万 が一、気に入ったら入門して下されば、その時から頂戴しますから。 みんなもよろしく頼む。」 『おすっ』 『よろしくな♪』 『がんばれよっ』 綿来師範 「では、始めから行くぞ! 構え!」 「いちっ!」 『せやっ』 「にっ!」 『せや、せやっ』 「さんっ!」 『せや、せやっ』 「しっ!」 『せやっ』 真剣に型を取って熱中する椿に対し、やり過ぎず・・・というよりは、丸で素人にも見える のんびりとした動きで身体を動かすこういち。 とても楽しそうに輪に溶け込んでいた。 -つづく- (でもいく) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年09月07日 13時42分07秒
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