穂村指導者 「うむ、こちらの保護のためにそちらから追加した 話。本人が不要と言うのであれば。」 ポイっ 彡 彡 ( 座る練習生の前に落ちた ) ゾルダ 「ふん、用意はいいぜ。」 勝村 「こちらもだ。」 二人は中央を見て向き合った。 目付きを変えたゾルダ。 穂村指導者 「お互いに例!」 『オス』『オス』 穂村指導者 「始め!」 勝村 『くぁぁ・・・』 ( 腹に力を込めて両手を前に押し出す仕草 ) 『くぉぉ・・・』 ゾルダは珍しくも右足を後ろに運び半身になる。 そして手をゆっくり胸と腹の前に移動させながら 拳を握った。 集中し終えドッシリと構えた勝村、ゾルダと視線 を合わせる。ゾルダは全く動こうとしない。 明らかにここまでと空気感が異なるからか練習生 からの発する声はなく、二人の動きに皆ジッと集 中している。 穂村指導者 ( 固い勝村がこの空気感を作ったのではない。 この少年の放つ雰囲気が変わり、勝村が自然 と取った行動でだ。 真剣さは感じ無いにも関わらず、茶化すでも 無く作法はちゃんとしている上に確かな実力 ・・・。この少年たちの異様な空気感はなんな んだ・・・ ) 張り詰めた空気の中、 『へっくしょーん!』 少年Aの豪快なくしゃみが。 少年A 「すまねぇ・・・。」 一瞬で緊張の空気感が解けた。 すると少しニヤけたゾルダが、後ろ足を蹴って前 に出していた左足を一歩近づけた。 瞬間素早く一歩後退した勝村であったが、そこで 止まったゾルダを見てその反動を利用して一歩踏 み込んだっ! 『はぁっ!』 左の正拳・・・と見せかけて間合いに入った途端に 左のミドルキックがゾルダの腹にヒット! バシ★ ゾルダの体が50cm後方に飛ばされた。 続けて右、左の正拳突きが脇腹、溝打ちに入る! ドスドス★ ゾルダは苦しい表情を見せず僅かに右に回避、そ こへ勝村の右ハイキックがゾルダの顔面に! シュー だがゾルダは右に回避した反動で着地した右足で 畳を蹴り、左足を踏み込んで相手の蹴りを顔側面 で受けながら右の拳を勝村の溝打ちに叩き込んだ っ! ドス☆★ 『ぐほっ』 ズン、 勝村が片膝を畳に付け沈んだ。 そこへゾルダの右の蹴りが顔面目掛けて襲い掛か るも、 ピタ☆ 寸止めし審判の穂村指導者と目を合わせた。 穂村指導者 「そ、それまで!」 『 ・・・・ 』 『 ・・・・ 』 『う、うそだ・・・勝村さんまで・・・』 『 ・・・・ 』 一部の者のつぶやき以外はシーンと静まり返って しまった研修生たち。 その様子を見渡し、 少年A 「勝村五段、次はあんただろうがこの状況でまだ先 をやるかい?」 穂村指導者 「 ・・・・ 」 ゾルダは審判に一礼『オス』、会場の際で振り返 り再び一礼『オス』し少年Aの元に向かう。 少年A 「俺達は勝負の内容はどうでもいい、早く飯を食い たいんだ。シャワーでサッパリとしてからな。 その為に、生きるために負けられない。」 穂村指導者 「 ・・・・ 」 少年Aの横にドッカと座るゾルダ。 少年A 「次は俺の出番だがよ勝村五段、 こいつらの前で指導者が倒されるシーンを見せる のは良くない、なんて気遣いは持ち合わせちゃい ない。あんたが気絶しちまうと飯食うのが遅れる から聞いてるんだ。」 穂村指導者 「一つ聞く、 何故こんな生活スタイルを続けているのだ?」 少年A 「俺たちは強くなりたい。 だが、食っていくにも入門するにもそのゼニが無 い。喧嘩して勝っても飯食っていけない。 だから勝って飯を食うこの方法にたどり着いたっ て寸法だ。更に強いやつと出会えて戦える上に蹴 り込ませて自分の体を鍛える事も出来るんでな。」 穂村指導者 「そう言う事か。 そんな生活がいつまでも続くとは思えんが・・・。」 ゾルダ 「俺は喧嘩しか出来んやつだ。 だけどよ、兄貴に『飯食うためには喧嘩じゃなく 試合じゃないとダメだ。そして試合するためには ルールと作法をきちんとしなきゃダメだ。 だから食っていく為にそれを覚えて実行しろ』と 言われたんだ。 飯食いたいからな。」 少年A 「今はこの方法しかない。それだけだ。」 穂村指導者 「プロの、格闘技のプロっていう手段もあると思う が。」 ゾルダ 「俺たちは縛られるのが嫌いでよ。 ルールってのも実のところ苦手だぜ。」 少年A 「そういう事だ。 でどうすんだ?」 穂村指導者 「約束だ、食事を与えよう。 先にシャワーだったかな?」 ゾルダ 「ありがてぇー♪」 少年A 「助かる。」 穂村指導者 「決して怖気づいた訳ではない。ただ道場破りの類 でもない。なら私と戦う意味が無くなったという だけ。 そこの、シャワー室に案内してあげなさい。」 練習生-1 「オス」 二人は立ち上がり、練習生に連れられて奥の階段 を上がって行った。 戦い終えた4人は寝ころんだまま起き上がれない でいた。 穂村指導者 「同情するところ大だ。 だがあの実力は尋常ではない。全く力まず入れ込 まず平静を装っていての戦いぶり、普通はもっと 勝ち気満々で相手を威嚇したり・・・。それらを全 く感じ無いとは。」 練習生-2 「あのぉ・・・」 今の話を聞き、恐る恐る手を挙げた練習生。 穂村指導者 「なんだ? 申せ。」 練習生-2 「はぃ、 聞いた話で私が実際に見た話しではないのですが 、もしかしたらその噂の二人なのでは・・・と思っ たのです。」 穂村指導者 「続けて。」 練習生-2 「はぃ、 私のクラスメイトの話です。 以前その彼の家の近くで深夜に10人を超える人数 同士での乱闘騒ぎがあったそうで、それを彼は 二階の部屋から見ていたそうです。 その時に後から二人少年が現れ、そのたった二人 でその場に居た人達をねじ伏せてしまったと。」 『えぇぇぇ!』 『10人抜きすら有段者でも至難の業だよ・・・』 練習生-3 「あっ、 それなら私も聞いたことがあります。 やはり道場ではなく喧嘩の場ではありますが、め っぽう強く少年二人が関わるとほぼ一撃で相手を 倒し、そしてその場はまるで爆破でもあったよう に一人残らず叩き伏せられてしまってると・・・。 そこから泣く子も黙る『撃爆兄弟』 って名が・・・。」 『それなら聞いたことある』 『おれもあるぞ』 穂村指導者 「うむ、その話が今日の二人と決めつける事は出来 ぬが、あの二人の実力からしてもしかしたら・・・ の推測は成り立つか・・・。 そうだとしたら生きるために体一つで戦い抜く、 並み大抵の事ではないぞ。」 「 ・・・・ 」 「 ・・・・ 」 「 ・・・・ 」 「 ・・・・ 」 ~~~ ~~~ ~~~ ゾルダ 「ふぅ、腹いっぱいだぜ。」 テーブルの上には出前で頼んだ空の丼が5っずつ 積み上げられていた。 コップの水も飲み干し立ち上がった。 少年A 「ごちそさん。 さぁて行くか。」 ゾルダ 「あいよ。」 ゾルダも立ち上がる。 階段を下りてきた二人、 少年A 「穂村五段、世話になった。」 穂村指導者 「もういいのか? もぅ少しゆっくりしていっても構わんぞ。」 少年A 「いや、長居は無用。 じゃな。」 ゾルダ 「ごちそーさん。」 ぶっきらぼうに出ていく二人、それを恐る恐る見 つめながら見送る練習生たちであった。 (プライドじゃなさそうだ)へ 登場する内容は実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 ● 第一章 1 話 へ ● 第二章 TOP へ ● 第三章 TOP へ ● 第四章 TOP へ ● Episode 03 Z へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年06月10日 14時30分00秒
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