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テーマ:訃報(134)
カテゴリ:注目の人
日本映画の最高傑作というものであれば、迷うことなく、この一本を選ぶ。「砂の器」。
上京して、東京砂漠という、人間の許容範囲を超えたメガロポリス(大都市)において、首都にある名画座として君臨していた、いや、人気を博していた文芸坐で、この「砂の器」を見た。 それまで見たどの邦画も、いや、洋画においてさえ、このように緻密で非の打ちどころのない筋立ての巧みなものはなかった。加えて、慟哭(どうこく)を禁じ得ない胸打つクライマックスは観客をノックアウトし、涙にむせび、席を立つことができないほどのものであった。いまだ、この作品を超えるものに出会ったことはない。 それは、原作者・松本清張をして『原作を超えた』と言わしめた、この作品の完成度であり、その脚本を手がけた橋本忍と監督・野村芳太郎の力量であろう。かくして、橋本忍と野村芳太郎が私の記憶に深く刻み込まれた。 さて、その橋本忍が亡くなった。享年100歳。ちょうど一世紀を生きたということになる。彼の手ほどきを受けた人の中に山田洋次がいる。いわずとしれた寅さんシリーズの監督であり、脚本家である。橋本忍は伊丹万作に師事し、山田洋次に受け継いだが、山田洋次は誰に受け継がせるのであろうか。 黒澤明と組んだ橋本忍が亡くなり、日本映画の全盛期は、またひとつ遠くなってしまった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.07.21 12:33:47
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