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テーマ:読書(8513)
カテゴリ:読書
ほぼ何の飾り気も意匠もないような感じの表紙。 先日、「キネマの神様 ディレクターズ・カット」を読んで、何かしら原田マハの作品を続けて読んでみたくなり、新田次郎文学賞を受賞していた理由でこの「リーチ先生」を手に取った。 新田次郎は山岳小説が有名で「孤高の人」「八甲田山死の彷徨」などが有名で、とても好きな作家なのだが、彼の本を読んだことがあるのかどうかわからない。ただ、映画「聖職の碑」を見て強烈な印象が残っている。 さて「リーチ先生」だが、私は絵が好きだけれど工芸にはあまり興味がない。それゆえバーナード・リーチという工芸家がいることを知らなかった。香港で生まれ、母が出産で亡くなったがため、当時日本にいた母方の祖父に日本で育てられた。4歳の時に父の再婚により、シンガポールへ移住。その後、イギリスへと移り、美術学校に入学するけれど、父の死去により、銀行員となった。銀行員の傍ら、美術学校でエッチングの技法を学んでいた時に、ロンドン留学中の高村光太郎と出会い、日本への郷愁が高まり来日。日本で焼き物工芸に魅せられて陶芸家となる。そして…。 原田マハによる独創的な伝記作品である。 リーチ先生が主人公でありながら、語り部は架空の人物、沖亀乃介(父)と沖高市(子)である。思いもよらない創作によって現実の物語をありありと見せてくれる手法は原田マハの真骨頂だ。どこまでが真実でどこまでが創作なのか。その筆加減が難しいところだけれど、彼女は数多くの取材と参考書物を読み漁り、堂々とした長編を書きあげている。文庫本にして588ページの小説はかなりの厚みだ。その厚みに気楽に読み始めることはできない。しかし、一旦、読み始めると止まらない。次はどうなる、この次はどうなる!?とワクワクが抑えきれずに読み進める。読書で夜更かししにようにコントロールするのがたいへんなくらいに興味がわいて尽きない。それとともに工芸への陶芸への興味が湧き、今も残るリーチの作品をこの目で見たいと思うようになった。 後半の後半にある淡く真摯な恋物語も私を酔わせた。 素晴らしく素敵な物語。 もっと世の中に知られてもいいのではないかと思えた。 圧巻である。 リーチ先生 (集英社文庫(日本)) [ 原田 マハ ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.10.17 14:34:43
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