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テーマ:最近観た映画。(39929)
カテゴリ:家で見た映画
いやー、これは好きになるわ、ホント。 泣いて、泣いて、泣いて見た作品であった。 そこかしこに思いで、繋がりが置いてあり、それが時々、ふってわく。 すれ違い、行き違い、なかなか重なり合わない人生が、主人公たちの心の引っ掛かりとともに、見る者の心にも引っ掛かる。 後押ししたいのか、引き留めたいのかがよくわからない倍賞美津子であった。また、まったく登場しない主人公・漣の家族。この二つが気がかりであったが、それ以外は十分に満足にたる作品であった。 【ネタバレ】 一歩、歩みを進めれば巡り会ったかもしれない二人。すれ違いの妙味はやや多かったかもしれない。なぜ?と思えるすれ違いも、ラストの埠頭の再会も無理やりといえば無理やり。でも、ラストは涙で感動することしかできなかった。背景を彩る花火も平成カウントダウンという催しがあってこその演出。 中学の時の出会いから始まって、葵の腕の包帯に”大丈夫?”と声を出したのが、挨拶代わり。合言葉のように漣から葵への表現となった。泣いている人がいれば抱きしめてあげなさいという亡き母の言葉を実行する娘の行動に感動する。ドングリを投げることも母から娘への癖の遺伝かと思えたが、祖父から娘へのそして孫への伝達(遺伝)だった。 サッカーで世界に出ることが夢だった漣が葵への思いに縛られ北海道から地元から外へは出られなくなってしまったこととは対照に北海道の地場での生活を望んだ葵が東京へ出て沖縄へと移り、シンガポールで働く。”だって、世界を飛び回ると言ったしな” 悪役になってしまった人がいたけれど、悪人が出なかった。善人と思えた人が事業に失敗して裏切ってしまうことは致し方なく、またその役を演じるのが斎藤工であったり、山本美月であったりするので予想は出来なかった。死を意識した漣の妻・香が中学から10年間付き合った元カレと再会していた現場に遭遇した漣。妻・香の行動は納得できるものではあるながらも容認したくない者であった。良心ではわりきれない心境である。そういえば、この香の役を演じた榮倉奈々はとても成長したと思えた。持ち前の明るさはもちろんであるが、胸に秘めたいろいろな思いを激情に駆られることなく、とはいえ絶妙な感情の発露で見せてくれた。助演女優賞ものだと思えるが、そんな評価はなかったのだろうか。主演の小松菜奈もかつ丼をかぶりつきながら泣きながら”まずい”という演技、これも今までは見せたことのないもののように思う。菅田将暉の演技は申し分なく、まわりを固めるキャスティングもいい。役柄以上に格のある俳優を使っていると思える。香の父母、永島敏行、田中美佐子をはじめ斎藤工、二階堂ふみ、松重豊、山口紗弥加、成田凌、山本美月、倍賞美津子と主役級を添え、高杉真宙、片寄涼太とソフトマイルドなイケメンを揃えたのもうなづける。 歌曲にインスパイアされた映画でこれほどみごとな作品となったものを始めて見た。感服、感心である。 劇中に流れる「ファイト!」の歌を聞いた時に初めて衝撃的な内容の歌だと知った。愕然。 これだけ感心した作品であるが、誰が創作したのか気になった。監督か脚本家か。 ウィキペディアによるとTBSの平野隆が原案・プロデュースとあるので骨子は彼が考案したのだと思う。ドングリや”大丈夫?”のネタも彼が考えたのだろうか? 監督の瀬々隆久(ぜぜたかひさ)は1960年生まれでピンク映画の助監督で商業映画を始めたらしい。職人としての腕を磨いたのだろう。「RUSH!」「感染列島」「ヘヴンズストーリー」「アントキノイノチ」「64-ロクヨン-前編/後編」「8年越しの花嫁 奇跡の実話」「有罪」「菊とギロチン」などがある。 脚本の林民夫(はやしたみお)は1966年生まれ。テレビアニメ「サザエさん」で脚本家デビュー。映画は「てぃだかんかん~海とサンゴのと小さな奇跡」「永遠の0」「チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」などがある。 Amazonにて 2020年/日本/130分/G 監督:瀬々敬久 原案:平野隆 脚本:林民夫 出演:菅田将暉、小松菜奈、山本美月、高杉真宙、馬場ふみか、倍賞美津子、永島敏行、竹原ピストル、二階堂ふみ、松重豊、田中美佐子、山口紗弥加、成田凌、斎藤工、榮倉奈々、石崎ひゅーい、片寄涼太 お薦め度 「糸」★★★★☆(90%) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.11.21 17:40:39
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