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2022.06.18
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テーマ:読書(8503)
カテゴリ:読書


恋愛アンソロジー。
「恋愛仮免中」というには、この題名に適した内容もあれば、そうでないものもあるけれど、編集者が悩んでつけたのか、このお題に対して作者が書いたものなのか。

まず「あなたが大好き」奥田英朗:著で始まる。
文春文庫の作品紹介によると
”28歳の彩子は、付き合って3年の恋人が相談もなく会社を辞めたことにショックを受ける。女友達は条件のいい男を紹介してくれ、彩子は恋人との別れを考え始めるが……。”
とある。
主人公・彩子は30歳を前に煮え切らず、会社も辞めてしまい再就職もせず世界を放浪する旅に出た恋人に愛想をつかし、婚活を始める。結婚にとらわれていた自分自身を省みる内容で表題「恋愛仮免中」に合致する気がする。

次に「銀紙色のアンタレス」窪美澄:著である。
文春文庫の作品紹介によると
”16歳の僕は、夏を海で過ごすためにばあちゃんの家に来た。夕暮れの砂浜で、その人は子守歌を歌っていた。……とても悲しそうな声で。”
とある。
夏、年上の人妻とくれば「おもいでの夏」を想起してしまうが、そこまでの関係ではなく、さりとて恋焦がれてしまった。突然訪れた幼なじみの女の子とは…。ピュアな想いが読む者の心を泡立てるので表題「恋愛仮免中」に合致する気がする。

三作目は「アポロ11号はまだ空を飛んでいるか」荻原浩:著である。
文春文庫の作品紹介によると
”1969年、中学生だった僕と彼女は50年後に一緒に宇宙に行く約束をした。その年まであと4年のいま、彼女は病院のベッドの上にいる。”
とある。
これはもう老い先短い、いや死期の迫った妻とその夫の物語だから「恋愛仮免中」ではない。もちろん、出会った頃の話は「恋愛仮免中」なのだろうが。年老いた夫婦は映画「きみに読む物語」の老夫婦のような関係だろうか。

4作目は「ドライビング・ミス・アンジー」原田マハ:著である。
文春文庫の作品紹介によると
”生まれも育ちも京都の善田は、半年前に妻を亡くし、会社を追われ、タクシー運転手となった。ある日、ボストンから来た老婦人をタクシーに乗せ京都を案内することに……。”
とある。
これは4番バッターのように、クリーンヒットを飛ばした佳作である。
題名から映画「ドライビング・MISS・デイジー」を想起させるが、おかかえ運転手と女主人の映画作品とは違い、やむなくタクシー運転手となった男の物語であり、たまたま来日した老婦人に貸切られた数日を描いている。快活な老婦人に圧倒され厚情に胸が熱くなる。なお、妻を亡くし、一人娘とのいさかいもラストの柿で締めくくられる。
これが「恋愛仮免中」?

最後は「シャンプー」中江有里:著である。
文春文庫の作品紹介によると
”両親が離婚したミサトは、クラブを経営する母親行きつけの美容院のシャンプーボーイと、偶然海の家で会うが……。”
十代の女性の不安定な心を掬い取った作品なのかもしれない。女優で読書家である中江有里が小説を書いていたことに驚いた。なかなかの作品であると思える。これは「恋愛仮免中」であると思える作品である。


恋愛仮免中 (文春文庫) [ 奥田 英朗 ]






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最終更新日  2022.06.18 09:39:03
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