マイライフ・マイシネマアルカディア

(C)2022 高橋ツトム／集英社／天間荘製作委員会

「細雪」の四姉妹の物語のようなものかと、三姉妹の日常生活を見るつもりで出かけた。

物語は現世の話ではなかった。
この世とあの世の間。
とはいえ三途の川などではなく、どこか海がきれいな地方。
その入り江を見下ろす高台の宿、天間荘。
そこを取り仕切る若女将のぞみ（大島優子）と水族館勤務の次女かなえ（門脇麦）。
そこに腹違いの三女たまえ（のん）が宿泊にやってくる。
姉妹の初めての再会にたまえ（のん）は私もここで働きたいと申し出る。たまえ（のん）につらく当たるのは大女将恵子（寺島しのぶ）である。
小言の多い長逗留の客・玲子（三田佳子）がいる。玲子（三田佳子）は現世では目が見えないがため、ここでは美しい景色を見たいという。
この世界がこの世とあの世のはざまである生死をわける場所だとわかる。
このはざまの町にいる人々がみな生死の境をさまよっている人々だと思っているとそうではなく、天間荘の客は生死の境にいるけれど、はざまに生きる生活者は死者であるということが告げられる。
死者！？
ここから物語はおおきく動く。
果たして三女たまえ（のん）は現世に還るのだろうか？

主役級で活躍しバイプレイヤーとしても異彩を放つ大島優子の演技が嫌いでなく、彼女を見にこの映画を鑑賞しに行った。のんが出演しているのも興味があった。のんの前事務所の強力な営業妨害にもめげず芸能仕事に励むのんを心なしか応援している。そういう人は多いだろう。大島優子が主演と勘違いしていたようだ。主演はのんである。大島優子の着物姿が板についていてほれぼれする。しかし、はすっぱな若者やきりっとしたポニーテール姿など七変化のごとくいろいろな姿を見せて切れる演技も見せた山谷花純が最も印象を残したといえよう。圧倒的であり圧巻であった。それとは違って大女優・三田佳子の恫喝には迫力が欠けていて残念に思った。
出演者すべてが良く、カメオ出演とされていた有名俳優たちはもったいない使い方だったと思える。

やや退屈な前半、眠気もあり、この作品を配信で見ていたら断念して中断していたであろうと思える。映画館で見たがゆえ、仕方なく（？）見続けたけれど、長尺でもあるので覚悟はしていたが。ひと悶着あって、三姉妹だけの後半になってからいろいろな事実がわかり、クライマックスには感動して泣いてしまっていた。見て良かったと思える作品である。
ラストショットがあれでいいのか疑問に思えるが、その後暗闇で流れる歌声はいい！