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カテゴリ:家で見た映画
(C)2021「ファーストラヴ」製作委員会 島本理生原作で第159回直木賞受賞作「ファーストラヴ」の映画化作品。 小説での設定は美女ばかり出てくるのでどういうキャスティングをされているのか興味を持った。なかでも中心人物となる美女・女子大生の聖山環菜は誰となるのか?私の中では橋本環奈であった。小説での設定はとても小柄で美女であるからだ。名前もカンナと音は同じ。映画では芳根京子であった。彼女は小柄という印象がなく、また美女というよりは聡明な優等生という印象がする。最大のミス・キャストに思えた。もちろん彼女は良い演技をするのだけれど、小説を読んだイメージにそぐわなくて心の中に入ってこない。その意味では美しい主演・北川景子も同じであった。容姿はぴったしなのかもしれないが、私生活での幸福感が頭をよぎり不幸な家庭に育った女性というイメージを持ちえなかった。変な話、佐々木希のほうが波乱な家庭生活になっただけに思いもよらぬ心象風景を描いてくれる気がした。我聞役の窪塚洋介にしても迦葉役の中村倫也にしてもイメージは違う。唯一、見せてくれたのは母親役の木村佳乃であった。彼女の夫への盲従ぶりとややエキセントリックなふるまいは絶妙であった。 誰の意向か、私が原作から汲み取った初恋はまったく描かれず、奇妙な由紀(北川景子)の動静だけが描かれて終わったような気がする。主役由紀は狂言回しであり、本来描かれるべきは環菜であるべきだったのでは。小説でみせた時系列が前後することによる興味深いサプライズは、時系列通りに映し出されて面白みも驚きもなくなってしまっていた。脚本家が良くないのかと思ったけれど傑作映画「NANA」を手掛けている浅野妙子だし、監督も傑作映画「イニシエーション・ラブ」を撮っている堤幸彦である。なのに……。彼らはそもそもこの作品を恋愛小説と受け取っていなくて、事件物として恋心を切り捨ててしまったのだろうか。それに、写生会の映像も原作とはまるで違う。長時間同じ姿勢で座っていて、全裸の男性と背中合わせ。そして、男性は環菜にもたれかかったいる。重い、重い、重い。その重みと長時間の辛さが卑猥さを感じさせるものとは別に奴隷的従属を感じさせた。そういうものが描けていない。 とても素晴らしかったのはUruの歌声、歌詞を聴かなくてもその歌声だけで心に染み入ってきた。 何も小細工せず原作通りに映像化していれば深みのある作品となったと思うだけに残念である。映画的制約により変更しなければならないものは変更しなければならないけれど、「よだかの片想い」「ナラタージュ」と原作を読み、映画を見た中では一番原作から遠い作品であると思えた。残念である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.11.10 23:42:36
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