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テーマ:読書(8504)
カテゴリ:読書
島本理生はきっと聞き上手。 聞く耳を持った作家だと思う。 現職の総理大臣が得手として聞く力、聴く耳を持っていると自らを評したけれど、彼の場合は聞くだけで右耳から左耳へとスルーしていってる気がする。 しかし、島本理生は違う。 彼女の本は細やかな蘊蓄と絶妙な人間関係を描いている。 読書していて、そう感じる。 そして、著者のあとがき、参考文献や取材した人々への謝辞を読むときちんと話を聞いて、自らの言葉へと組成したと思える。 本作においてはワインバーを経営することになるのだが、そのワインに関する知識、食べることが好きな主人公の食に関する知識、感性。スペイン旅行におけるスペインの風物詩、店がある千駄ヶ谷や新宿の地理など見聞きしたものがうまく書き表されている。 引いては押す波のごとく、人間関係の出し入れの感覚の繊細さは読んでいて私の感覚を刺激する。 また構成が見事である。 「2020年の恋人たち」と改題した「2020年までの恋人たち」であったとのことだが、オリンピックを目指しオリンピックを開催したであろう2020年までの30過ぎの女性の生態を書き連ねようとしたところ、開催できなかったオリンピック。それゆえ変更を余儀なくされたであろう小説の結末。2020年から2019年に戻っての結末はみごとであったと思える。 2020年の恋人たち (単行本) [ 島本 理生 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.11.12 23:39:32
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