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テーマ:読書(8500)
カテゴリ:読書
著者初の官能小説とうたわれているので、どのようなものか興味と恐れを抱きながら読んだ。 この程度の、といってはおかしいが、岸惠子の「わりなき恋」と同様、驚きはすれど、いやらしいとはとらえなかった。男性作家の場合はどうなのだろうと思ったけれど好んで読んだ渡辺淳一の「失楽園」や「愛の流刑地」など記憶がない。小説の記憶がないだけで映画の「失楽園」でも「愛の流刑地」でも、その濡れ場の記憶はしっかりと残っている。小説が思い出せないのはそのせいか……。 島本理生の「よだかの片想い」を読んで、その小説に惚れ込んで読み進めてはいるが、この「RED」という作品を読んでいるときに、小説という作家性ではなく作者自身に惚れ込んでいるのではないかと思えた。自身の母子家庭という体験を時折、小説に投影しているように思えて、その母子家庭の娘だった時の想いが痛切に語られている気がするのである。娘、子供であり女性であることの脆弱性をひしひしと感じる。その思いが小説の中でも散見される。 さて、これは学生の時に不倫の相手を体験した女性がその十年後、自ら不倫を体験する話である。 何不自由なく暮らせる家庭に嫁ぎながら、女性に無関心というより恐れをなしている夫と一人娘、同居の義父母。物は足りていても不自由さ、遠慮、気苦労を感じる主婦が一人の女性としてどのようにもがき自分らしく生きていこうとするのか、葛藤と試行錯誤の物語である。 この物語、生活が破綻するのか、人生をやり直すのか、という岐路に立たされるが、時空をとんで10年後の生活で締めくくられる。どう感じるかは、読み手しだいなのかもしれない。 Red (中公文庫) [ 島本理生 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.02.02 22:59:06
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