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テーマ:読書(8504)
カテゴリ:読書
東野圭吾 「希望の糸」 講談社文庫 『新参者』『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』とテレビドラマや映画となった加賀恭一郎シリーズを見て読んで、読んで見てとやっていたのだけれど、この『希望の糸』が加賀恭一郎シリーズのスピンオフ、主役が従弟の松宮脩平である。もちろん、ところどころ加賀恭一郎は登場するのだが、松宮の出生の秘密と殺人事件がメインであり、彼の私生活と業務(殺人事件の捜査)が入り乱れ、並行して描かれる。 話が展開していくにつれ、すこしづつ謎が解明されてくるのだが、読者は腑に落ちない感じを松宮修平と共有していることとなる。事件解決=犯人逮捕の後も個別捜査は続けられ物語はクライマックスを迎える。 予期せぬ告白は天にも昇る気持ちにさせられ、こんな幸せなことはないと思えたすぐあと高層ビルのてっぺんから地面にたたきつけられたかのような衝撃を味わう。歓喜のショックから奈落の底へ落されるショック。読者の感情をいたぶるように上下させた作者東野圭吾は恐ろしい。思わず涙がにじんだ…。 現実ではありえないことが現実でありえたという物語。 東野圭吾の小説はなぜこれほど魂を揺さぶるのか、と考えた。 それは情を描くことができるだろうからと思える。 主人公の感情、犯人の感情、秘密を抱えたものの感情。どれをとっても心のひだの震えがわかるほど深く丁寧に描かれている。と私は感心した。 とても素晴らしい作品であった。 思わず(合掌)
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最終更新日
2023.05.11 23:32:18
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