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テーマ:読書(8504)
カテゴリ:読書
読み終えてわかる「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」の意味。 これを題名にするすごさ。 なんだろう?と思える不可解な題名がすでにミステリー。 主人公みずほが作家・辻村深月を投影した人物ではないかと思える。 山梨県から都会の優秀な大学に進学し、就職もせずライターをしてる。 かたや地元に残り正社員になれず、コネで契約社員として働くチエミ。 幼なじみの二人は中学までは仲が良かった。 高校はみずほが進学校へすすんだことにより地元の公立高校にすすんだチエミとは疎遠になった。 みずほは大学進学で地元を離れた。 そのみずほも就職叶わず大学卒業後に地元に戻ったことでチエミとの交遊が復活。しかし、5年後みずほが兄の後輩と生活するために上京したことにより関係は断たれた…。 チエミが事件を起こし、失踪した。 チエミに寄り添えなかった自分を反省し、チエミを探しまわるみずほ。 その顛末を描いた作品である。 三分の二を占める第一部をみずほ側から 残り三分の一に満たない第二部をチエミ側から 描いている。 これは後年の作品「傲慢と善良」(第一部男性側・第二部女性側)と同じ手法である。 この「ゼロハチ、ゼロナナ」は撮影直前で中止となりNHKが損害賠償を請求した裁判になったと知り、とても興味を持った。しかし、すぐに読むべきものでないと考え、十分辻村深月作品を読んでからと思った。十分とは言えないが、ある程度辻村深月作品を読んで、今、読みたくなり、読んでしまった。 これをドラマ化するのか。 ドラマ化しようとしたのか。 原作とドラマが異なることは良くあること。 ただ、それは契約したから、話が進んでしまったから、と諦め、出来上がった作品がとんでもなく違った作品になってしまったとしても、やむを得ない思える状況がある。 ただ、辻村深月は改変を良しとしなかった。 出来上がった脚本の書き直しを要求した。 小手先の変更では直しえないから。 ところが製作がすすんでいた現場では脚本の直しは受け入れがたかった。スケジュールは決まっている。 辻村深月は映像化許諾を取り下げた。 撮影中止によりNHKは俳優等にキャンセル料金(違約金)が何千万円が発生した。 といった経緯であるようである。 裁判はNHKの訴えを棄却する判決を下したとのこと。 登場する女性たちの気持ち・思い・考えがよく描けていると思える。 読んでいておもしろい。 事件に関する報道と真相の違いも目からうろこのように驚く内容となっている。 読者はみごとに騙されると思える。 辻村深月がこだわったみずほと母の確執についてはほぼ何も描かれていないけれど、母への思いを吐露しないところにみずほの心の傷があると思われる。 後半登場する山田翠(やまだみどり)、富山の大学生にも母親との家族との確執がある。 母と娘の関係。 事件のため見えにくくなっているが、これが真のテーマなのかもしれない。 ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫) [ 辻村 深月 ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.08.05 12:07:54
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