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テーマ:読書(8508)
カテゴリ:読書
ファンタジーは好きじゃない。 嫌いじゃないけれど好きじゃない。 それは、あまりに途方もないことが描かれ心酔することが出来ないからだ。 映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」がまさにそれで号泣したけれど、設定にありえんと不満を持った。 また、映画「今夜、ロマンス劇場で」も同様であり、設定はありえないけれど、やはり号泣した。そして満足した。大満足であった。 この違いは何だろうか。 さて、本書「ぎょらん」である。 先の展開は読めず、主人公の朱鷺(トキ)は近寄れない小汚い野郎なのかカッコいいイケメン風情なのかわからない。消沈と鬱屈とした引きこもりが社会に出ていって躁鬱となり“ぎょらん”に振り回される。その物語の終焉が…。 “ぎょらん”は存在するのか。 作者・町田その子の思いが、心情が表現される。 あまりに振幅の大きい朱鷺のありさまに想像すら追いつかない気がして、読み手は翻弄される。登場人物には別の顔があり、その真相なり、心情を知ることで読み手はそれまでとは真逆の感情を抱くことになる。なんという不思議、なんという作者の技量。 人の思いと生きていく術、生きていく力を感じさせてくれた。 大いに心惑わされ翻弄された読み物であった。
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最終更新日
2023.09.02 11:23:09
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