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テーマ:読書(8509)
カテゴリ:読書
読み終えて、驚く。 物語が佳境に入って、彼と彼が同一人物だと気づく。 並行で描かれていた生活が二十数年前と今と時代を越えたドラマだった。 同じ現代でAとBとCが錯綜して描かれていると思って読み進めたが、AとBの間に二十数年もの隔たりがあり、AとCは同じく現代であった。 昔を知っているからこそ違和感なく同時代と思ってしまったのかもしれない。 読み終えて、宇佐美まことの本を私は読んではいけないのではないかと思えた。 内容がおどろおどろしく、非業で無残なものであるからだ。湊かなえの「告白」を読んだときに作家その人についてはわからなかったが、性悪説をもって描かれている内容に他の作品を読んではいけない、読むべきではないと思った。宇佐美まことの場合、最初に手に取ったのが「逆転のバラッド」だったので、群像劇として描かれているのがおもしろく、クライマックスもラストも衝撃的で痛快であった。大変面白く読めたので「ボニン浄土」を読み感心し、この本「展望塔のラプンツェル」を読んだ。 「展望塔のラプンツェル」は読み進めるほどに救いがなく、解決したとは言えないまま禍々しい(まがまがしい)ものが残り、ざらついた気分の悪さを残す読了感であった。 負のオーラにまとわりつかれてしまった。 救いのないように思える一方でどこか救いがあるようにも描かれている。
宇佐美まことはどちらを見ているのだろうか。 展望塔のラプンツェル (光文社文庫) [ 宇佐美まこと ] 展望塔のラプンツェル [ 宇佐美まこと ] お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.12.21 22:29:39
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