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2024.06.07
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テーマ:読書(8619)
カテゴリ:読書



フランス文学の現代作品を読みたくて、ググってはみたものの適切なものがわからず、166pと手軽そうなので読んで見た。

読んで見たが、理解するにはなかなかの私小説、純文学(?)だった。

10歳年下の異国の男性と逢瀬を重ねながら、音沙汰がなくなり別れを実感していく日々が書かれてある。彼を思い出しては、昔を思い出して胸詰まる思いにとらわれる。その気持ちを書いている。過去の事件も書いている。

そして、本文もさることながら、あとがき、そして解説を訳者が長文掲載している。恐れ入ってしまった。どのように捉えていいのかわからず、ググってみると、

ノーベル文学賞のアニー・エルノー「シンプルな情熱」 担当編集者が語る、今読むべき理由とは?|まいどなニュース (maidonanews.jp)

に行き当たった。このまいどなニュースを読んでようやく少しわかった気がした。なかでもオートフィクション(自伝的なフィクション)という言葉を見つけて、そういうことなのかと了解した。最近の映画もそうだが20世紀では現実ネタを“true story”として描いていたが、今では“inspired by the true story”実話に基づく話としてフィクションであるとしている。この本は実話をネタに小説として書いた話なのである。

衝撃的な内容も含まれているけれど、だからなんなのだ、とも思えてしまい。私の理解や共感が足りないと思えた。

また、驚いたことに作家・アニー・エルノーはノーベル文学賞受賞者だった。

(以下、まいどなニュースより)

“アニー・エルノーは以前からフランス語圏では人気作家として知られていましたが、「Les années(歳月)」の英訳が2019年にブッカー国際賞の最終候補になったことから、英語圏での人気に一気に火が付きました。また、数年前から必ずノーベル文学賞の発表前は受賞候補として名前があがっていたため、いつか受賞するのではないかと早川書房内でも期待がありました。

20226月に、アメリカ合衆国の最高裁で、1973年に認められた人工妊娠中絶の権利が破棄されたことや、女性の中絶の権利が危うくなってきている世界情勢の中で、エルノー自身の中絶体験が色濃く反映された「事件」がふたたび注目を集めたことなども少しは影響しているのかもしれません。“

(以上、まいどなニュースより)

そしてまた驚いたのは第78回ベネチア国際映画祭にて金獅子賞を受賞したフランス映画「あのこと」の原作「事件」がアニー・エルノーの本であることだった。映画「あのこと」を見てもなんだかなぁ、としか感じられなかったけれど、映画の舞台となる1960年代フランスでは中絶が犯罪であった。映画は「望まぬ妊娠をした大学生の12週間にわたる日々」を描いたものである。その時代の閉そく感、妊娠・中絶の当事者となった絶望感、悲壮感を十分に感じられなかった私であった。原作者アニー・エルノーは主人公同様、あの時代に中絶を体験している。そして、それを小説に書いた。小説に書けたのは中絶が犯罪でなくなり、憲法で中絶を容認するようになったからであろう。とはいえ、フィクションにしたが実体験を書き公表したことは驚くばかりである。



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最終更新日  2024.06.08 12:55:29
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