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カテゴリ:映画館で見た映画
(C)2024「傲慢と善良」製作委員会 以前 2024.09.06『2024年9月27日公開。映画「傲慢と善良」に思うこと。』 をブログに書いた。そして、今日も映画が始まる直前まで主役はこの二人でなくて誰が良いだろうかとずっと考えていた。 映画が、始まる。 交差点で花束を持った女性の胸元が映る……。 小説「傲慢と善良」(読書レビュー「傲慢と善良」)はミステリーでありサスペンスである。そして、途中から東北、東日本大震災の被災地でのボランティアに舞台は移る。この冒頭から中盤にかけてのミステリー・サスペンスはドラマとしておもしろい=興味を惹くこととなるが、東日本大震災の被災地が舞台となってからはとても映像化が難しい作品だと思われた。その作品を躊躇なく映画化するので驚き、この部分をどのようにするのか気になって見た。この被災地ボランティア、中でも被災地の現状、無残な被災映像は映すことなく、局地的なボランティア活動を映すのみであった。その点、東日本大震災の被災に関してはほぼ触れない、ボランティア活動のみのシーンとなっている。うまい手法だとも思えるが結局、映像として東日本大震災の被災地の映像は撮れない、映せないということなのだと思う。省略されている。ミステリー・サスペンス作品でありながら映画化にあたってはその部分がうまく省略されていて、婚活アプリで出会った二人の関係性、結婚に向かう軌跡に焦点が絞られ、結果、サスペンス感は不思議と感じられない。そして、映画化作品は恋愛映画となって結実している。このことを原作者は許したのか、映画にまとめるためにフォーカスした結果なのか、良し悪しは別にしてとてもいい恋愛映画となっている。 映画は原作に忠実なものとなっていない。しかし、大筋はたどっていて結末は映画独自のような気もする。(というのは小説の結末を覚えていない)以前書いたブログでキャスティングについての不安を申し上げたけれど、今日、映画を見たところ、この二人で良かったかなと思えた。中でも奈緒がいい。映画の冒頭でこそ小説の表表紙の肖像画の主人公・真実に寄せたメイクで真実っぽく見せるように作っていたけれど、進むにつれて真実というよりも奈緒としての真実、奈緒らしい主人公として登場していた。奈緒が婚活に悩み疲れる女性を等身大にみごとに演じていた。それは見る者(私)の心を感動させた。脚本がいいのであろう。婚活と恋に焦点を絞って、あとはほぼ削って恋愛映画として感動のフィナーレを書き上げている。 キャスティングがいいのか、皆の演技がいい。それも脚本がいいからだろうか。つまり原作がいいからだろうか。原作とは母のイメージが違いやや強い母として宮崎美子が演じているが、これくらい強くてもいいのだろう。父として阿南健治もいい。「あぁ」とか「おい」とかしか言わない父親であるがそれこそが田舎の父親らしくうまく演じている。西澤架(藤ヶ谷太輔)の友人役の二人もいい。一人は桜庭ななみであり、もうひとりも仲の良かった女友達として、いると思える存在だった。お見合いの仲人の前田美波里も良かった。映画全盛時の女優という感じがしたのは鼻濁音を明瞭に発する爽やかな口跡。今時、なかなか聞けない鼻濁音であった。素晴らしい。被災地・東北のボランティア・リーダーの高橋耕太郎(倉悠貴)と真実(奈緒)の週末ドライブへ行く・行かないのやり取りが友達以上恋人未満の微妙な空気感がいい。人の恋を後押しするよしの(西田尚美)も良かった。出演者みながきちんと自らの演技をこなせていたのはすごい。あと東北の地元の人たち、笑って、笑って、笑いだけで人との距離感を詰めていく感じいいなぁ。 ラストに二人のシーン。受ける芝居の藤ヶ谷太輔は大変だっただろうけれど、彼が多分うまく受けてくれたのだろう、奈緒の演技はヤバかった。素晴らしかった。真実の気持ちがあふれ出た。私も涙、涙、涙であった。 原作を忠実に映像化しない作品は落胆することが多いけれど、この映画は原作をうまくそぎ落とし婚活恋物語に集約したことにより素敵な恋愛映画となった。 見て良かったと思う。とてもとても良かった。 2024年/日本/119分/G 監督:萩原健太郎 原作:辻村深月 脚本:清水友佳子 出演:藤ヶ谷太輔、奈緒、倉悠貴、桜庭ななみ、菊池亜希子、前田美波里、阿南健治、宮崎美子、西田尚美 お薦め度 「傲慢と善良」★★★★☆(90%)お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.10.06 00:25:20
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