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カテゴリ:読書フィクション(12~)
「泣くな研修医」中山祐次郎 幻冬舎文庫
私の父親の膵癌の大手術。とても大きな手術の担当医を務めてくれた先生は、たとえ研修医だったとはいえ決して忘れることはない(名前は忘れた。そもそも普通の若手医師だった)。淡々とした術式の説明をしたエライお医者さんの顔は思い出さないけど、病室に毎日顔を出してくれる若い先生の方を覚えるのが人情というものだ。 手術の後に、若い先生は取り出した癌の塊を「希望するなら見せてあげる」と言った。行った部屋のなんと雑然としていたことか。奥の方に黒いソファーを置いてあるのを私は見逃さなかった。術後の1週間は私も父親の病室に泊まり込んだ(布団を借りてベッド傍に敷いた)。夜の8時ごろ少し顔を覗かせて、次の日朝7時ごろ顔を覗かせていた担当医。先生は無精髭を生やして、絶対あの部屋で寝泊まりしているんだと思った。「新・神様のカルテ」で知ったし、この本でも書いているのだが、そんな過労死レベルの長時間労働の研修医の給料が手取り20万円ほどだというのは、その当時は知らなかった。 ‥‥というのは、患者家族の側から見た研修医の姿。研修医の側から見ると、全く違った景色が見える。専門用語と俗称(スラング)が飛び交う、小さなミスが生命の分かれ道になる緊張感あふれる世界である。どんな仕事でも、はたからは全くわからない専門性と技術の習得が新人の最大の仕事であり試練である。数秒ごとに刻々と変わってゆく現象の意味を、何万という知識の中から瞬時に選び取り最善の処置をしてゆく。人間とはなんと高度な行為を重ねてゆくのだろうか。 著書は現役医師。しかも解説者によるとかなり志の高いお医者様だったようだ。とてもわかりやすくエンタメ性の高い小説。天野隆治くんの成長を定期的に小説で覗いていこうと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年02月12日 18時57分47秒
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