私呑んでません!
先日、旭川出張中の車内から外を見ていると、北海道警察のパトカー。また路上で取り締まりをしている警察官の方々をいたるところで見ました。国道を走っていた何台かは、モスラが羽ばたくように、旗を“ばっさばっさ”振り回す警察官に誘導されて、横道に呼び込まれておりましたが、その光景を見るたびにスピードを出していなくても思わずブレーキを踏んでしまうのは、私が「どちらまで行かれますか?随分急いでますね~」の洗礼を、以前に数回受けた事による条件反射でしょうね。そんな光景を見てふと思い出しました。もう随分前の話(歩夢はもちろん拓蒼も生まれておりませんでした。)ですが、夜、車で片道20分ほどの実家に用事をたしに行った妻が、自宅への帰路、家まで後少しとなった地点で酔っ払い運転と間違えられたようで、パトカーに停車を求められたそうです。まったく飲酒に身に覚えのない妻は少々憤りを感じたそうですが、ここは大人しく運転免許証を提示するために、渋々と助手席前のダッシュボードを開けると…そこにあるはずの免許証がありません。何とこの時、妻の運転免許証は自宅のテーブルの上にあったのです。ここは、いわれのない飲酒運転疑惑よりも、自分の落ち度の方が大きいと判断した妻は、先ほど抱いた憤りを心の底へしまい込み、反則金の支払いから逃れようと卑屈な笑顔を浮かべて「すみません。うっかり気がつきませんでした…免許証は間違いなく家にあります。無免許ではありません」と、低姿勢で頭を下げたそうです。警察官が免許センターへ照会した結果、妻が車を運転する資格を持っていることが証明されました。年配の警察官は、うん?飲酒運転では?と、「そこの車!停まりなさい!」などと、あらぬ疑いを掛けた事で良心の呵責もあったのか、今回の軽微な免許不携帯に対しては寛容な気持ちになっていたようで「まぁもう家も近くのようですから、気をつけて運転して帰って下さい。」と、およそ警察官らしくない台詞でその場を収束しようとしたようです。してやったり!とばかりに妻が「ありがとうございます。気をつけます。」と、警察官が気の変わらないうちにと車に乗り込もうとしたその時…もう1人の若い警察官が。「ダメダメ、奥さん反則金だけですから、ちゃんと納付書を切りますよ、それに旦那さんか誰かに免許証持って来てもらわないと運転させるわけにはいきません」と、ナイル鰐のような目をしながら言い放ったそうです。どちらかと言えば妻は温厚な平和主義者ですが、ここ一番では私よりも気丈な面がある事は承知をしておりました。しかし、この場面で、国家権力相手にその胆力を発揮するなど想像することも出来なかったのですが、妻は、一旦喜ばせておいて、崖から突き落とすような仕打ちをされたため、最初に抱いた憤りが静かに爆発したようで。「反則金は払いますが、主人は遠くへ出張していて今日は帰りが遅くなります。(嘘ですね、いい度胸をしております。)遅く帰って来た主人が心配になって探してもらうまで何時間でも車にいます。見つけてもらったら警察署に行って、いわれのない飲酒運転の疑いをかけられて大いに不快であることを、お話させていただきます。」と、静かに言い放ったそうです。最初に「寛大な処置」をご提案された警察官は、笑いながらどうやら部下であるらしい「正論」の警察官に「ひそひそ」と話をした後。わかりました。「反則金はお支払い下さい。でもその車、私が運転してよろしいですか?奥さんはパトカーに乗って下さい、家まで送ります。それで良いですよね。」と、大岡裁きを下されたそうです。そう静かに諭されると、自分が道路交通法違反を犯している事に気がつき、顔が赤くなるのを感じて「いえいえ何とかしますので…」と、しどろもどろで返答したようですが、結局サイレンと赤灯の使用はないものの、犯人護送よろしく、妻はパトカーの後部座席に座って自宅まで送迎してもらってしまいました。帰りが遅いなぁと、心配し、時折窓から外を見ていた私の目に、パトカーと我が家の車が連なって家の前に停まるのが見えたその瞬間。どれだけ私が狼狽して外に出て行ったかは、皆様のご想像を遙かに上回っていた事は間違いありません。「何かあったかっ!」と、まさに髪の毛が総毛立つておりました。しかし、慌てて右足だけにサンダルを履いて飛び出した私の目には、パトカーに向かって、大恐縮してペコペコ頭を下げる妻の姿が、電柱からぶら下がった防犯灯の薄暗い灯りの中で、ぼんやりと映し出されておりました。パトカーが去った後、家に入って事情を聞き「妻に、そんな酔っ払い運転に間違えられるくらいふらついていたなんて…どんな運転してたの?それにしてもパトカーに乗って帰ってくるなんてどうなってるの?」と聞くと…「いや、普通に前をちゃんと見て運転してた。音楽もラジオも聞いてなかったのに!あのパトカーが…」と、事件の全容を話てくれました。まったく予想外で、まったく信じられない答えが、1分程度にまとめられてあっさりと返って来たわけです。しかし考えてみると、妻の運転は、ハムスターがゲージの中のおもちゃで回転するような見事なハンドルさばきなのだから、それもしょうがないだろう。と、納得して、路上に置きっ放しの車をしまうために、こんどはゆっくりと茶色の健康サンダルを履いて外へ出たのでした。外に出てすっかり落ち着くと…そのお間抜けな出来事に笑いが止まらなくなりましたが、妻のプライドを守るため、笑いが収まるまで、外でハイライトを数本吸っていた事を今でもよく覚えております。(私が禁煙をしたのは、長男の岳幹が5歳のなる年でした。)昨日も交通違反取り締まりのため警察官の方々が多くご活躍されておりました。じつはここ数ヶ月の間に、我が町の管内で死亡事故が数件発生いたしております。交通事故を防ぐのは自身の心がけが大切であることを、わたくしの雑文を読んだ事で心にとめていただければ幸いと存じます。そうです。「啓発」のために、警察官の方々は取り締まりをしているのです。警察官の皆様ありがとうございます。