タイガータイガー・ジレッタイガー
えー、昔から落語好きの方といゆのは結構いらっしゃっるようで。大学の落語研究会、さらに高校の落研など。若い人にも結構人気があるようで。ここんとこ、ブームというんですかね。一年前には映画「花とアリス」で高校の落研が舞台。今年はそのものずばり。落語を題材にしたドラマを作ろうって話がございまして。出来上がったものをみてみれば、やくざやサンやらちょっとめかした洋服屋の店員さんやら。男好きのするいい女やら。いろいろでできて、まあ、うまいこと話をこさえるもんですな。まあ、ほかならぬ私もこういった話は嫌いじゃねえんで。毎週見ては、高笑いしたり、気をもんだりしているわけでございますが。そんなこんなで私もあやかって落語風に小話なんぞ。今は人材派遣などのお世話になってあちこちの会社にお世話になっているわけでございますが。昔は福島の街道沿いのでかいトラックばかりが入ってくる油やで奉公していたものでございます。トラック屋さんっていうのも大変な商売ですな。北は北海道、青森やら。南は鹿児島まで一日で行ったり来たり。朝は半そでで出てきて、夕方にはジャンパー着込み、コンビニで弁当買っては車の中で寝泊りするといった風情ございます。ある日、木枯らしが吹き、地面も凍りつく寒い日のことでございました。青森のお得意さんがいらっしゃいました。「おう、店員さん。 油、満タンにしてくんな」「へいらっしゃい。相変わらずいそがしそうでんな。 中で休んででくだせい」「いやー、あんまし落ちたくねえんだわ。 忙しいんでな。 でもトイレだけ借りるぜ」そう言いながら寒そうにトイレに駆け込んで行くんでございます。そうして帰ってくるのを待っておりますと。「おい、おい、店員さんよ。 福島の町ってのはなんでこんなに寒いんだい。 なんだか骨身にしみるぜ」「いや、いや、青森の人にそんなことを言われた日にゃ福島の立つ瀬ってもんがござんせんでしょう。 北のほうがもっと寒いもんだと思っていたんですがね」「そうかい。 しかし、寒いな」などと話して帰っていかれました。そうこうしているうちに半年がたち、ミンミンゼミのなく、夏の蒸し暑い日のことでございます。鹿児島のお得意さんがやってまいりました。「おう、店員さん。 暑いねえ。 油、満タンにしてくんな」「へい、どうぞ。 中で冷たいもんでもいかがですか」「いや、冷たいもんならあるからよ。 忙しいんでな。 落ちねえでいくわ。しかし福島ってところは暑いところだねえ」「いや、鹿児島の人にそういわれるとは思いませんでしたねえ。 普通、南へいくほど暑くなるんじゃござんせんか」「いや、福島に来るとなんか蒸し風呂に入ったようにじわーっと汗がででくんだな、これが」「へえ、そういうもんでござんすかねえ」そういって落ちる暇もなくまた走りますんでございます。しかし何ですな。 住めば都なんでございますが、福島ってところも結構住みにくいところなんでございますかね― おい、おい、POOさんよ。 さっきから長々としゃべってるけどこの話、落ちはあるのい ―いや、あっしも忙しいみなもんで。 落ちてる暇はござんせん。おあとがよろしいようで。タイガータイガー・ジレッタイガー